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【長編】多国籍軍を率いるスペイン人社長のNIPPON起業奮闘記

イバイ
謙虚で穏やかな人柄、静かな語り口で話す流暢な日本語。取材中、何度も飛び出した「おかげさまで」「お客様」・・・日本人以上に日本の企業文化を愛し、日本の精神を身に着けた経営者かもしれない。「ゴルゴ13」好きが高じて来日し、日本のゲームを海外向けにローカライズ(相手国の言語・法令・慣習などにあわせて改訂)する会社を日本で起業したスペイン人のイバイ氏。10ヶ国から来日した外国人スタッフ30人が働く多国籍企業で、さまざまな文化や思想を持つスタッフを率いて順調に事業を拡大している。翻ってみれば2000年初期の日本では、長らく続いた不況下で日本人ですら事業展開が厳しい時代だった。母国スペインから遠く離れた日本に単身乗り込み、激戦のゲーム業界で事業を展開してきた舞台裏を聞いた。

〉〉〉スペイン出身のイバイさんが来日されたきっかけは?

私は「ゴルゴ13」が大好きなんです。大学卒業後にどこか旅をしたいと思い立ち、漫画の影響で興味のあった日本を旅先に選びました。スペインの実家の街・サンセバスティアン市と香川県丸亀市が姉妹都市提携を結んでいて、安く日本に行けたというのも理由の一つです。当初は3週間の予定だったのですが、日本がとても気に入ってしまい、家族の反対を押し切って定住することになりました。

来日したのは23歳のときです。まず丸亀市に入ったあと、すぐ東京に渡り、日本の漫画をスペイン語に翻訳するアルバイトを始めました。実は来日した当時は、日本語はまったくできなかったんです。それでも「日本語できます!」と見栄を切り、翻訳の仕事をしながら日本語を覚えました。だからこれまで一度も日本語のレッスンは受けたことはありません。

翻訳の仕事では、「はだしのゲン」や「ブラック・ジャック」など日本を代表する漫画を担当できたのでとても運がよかったですね。ですが日本語がろくにできないのに翻訳家になってしまったので、当然ながら仕事は大変で地獄を見ましたよ(笑)。自分は日本で一体何をやっているんだろうってね。

〉〉〉ゲームのローカライズ業界にはどういう経緯で?

翻訳の実績をもとに大手ゲーム会社のマーベラスエンターテイメントに入ったんです。約4年在籍し、任天堂Wiiのタイトルや「牧場物語」といったシリーズを欧州向けにローカライズする仕事に携わりました。ゲームのローカライズの仕事の基礎はこの会社で覚えました。

マーベラスに入社した理由は、今後ローカライズ市場が拡大すると思ったからです。入社して3年後にはiOSが普及してきたこともあり、ローカライズ業者として独立してやっていけると思いました。法人を設立したのは2007年、28歳のときです。前職から仕事を請けるかたちで独立できたので、本当に運がよかったと思います。

会社設立の手続きはすべて自分で行いました。私のような外国人が日本で起業するのは大変と思われるかもしれないですが、日本は他国に比べて手続きが優しくて助かりました。起業するためのビザ変更の手続きもやりやすかったですし、1円起業の制度を活用したので資金がなくても法人を設立できました。

会社を立ち上げたのは東京の秋葉原ですが、半年後に大阪に移転しました。家賃4万円の阿波座の雑居ビルからのスタートでした。本拠地移転の理由は、外国人の雇用です。大阪は東京に比べて競合が少なく、外国人が雇用しやすかったんです。

ちなみに、これは私の主観ですが、関西には日本に強く興味を持って来日した外国人、つまり意志をもって日本に滞在している外国人が多い気がします。京都や奈良など日本の文化が息づく地だからでしょうか。関西にいる外国人は、長く日本に留まる傾向にあるように思います。大阪本社で働く外国人はほぼ関西で採用できてますから、その意味でも大阪に拠点を移してよかったですね。

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〉〉〉とはいえ、多国籍の人材を採用しマネジメントするのは大変では?

いま当社では総勢10ヶ国に渡る国籍のスタッフが働いています。日本国内のローカライズ業界でこれだけの外国人を抱えているのは当社だけなので差別化にはなります。ですが、おっしゃるように多国籍の人材をマネジメントするのは大変(笑)。

国によって文化や風習、宗教、国民性が違います。だから共通の価値観や商習慣のもとで組織を束ねることはできません。たとえば決まった時間にお祈りをする国の人に、会議中に祈ってはダメなんていえないですから。帰るときに挨拶をしない国の人もいますが、それがその国では普通だといわれたら仕方がない。これだけの多国籍集団だと、もはや文化の分かち合いは不可能です。もう我慢するしかない(笑)。

〉〉〉これまでで最大のピンチは?

2011年3月11日、東日本大震災ですね。当時は25人ほどのスタッフが働いていましたが、そのうちの多くが「日本は危険だから」と自国に帰ってしまったんです。原発の事故以降、海外のニュースは日本のメディアとは伝え方が異なりました。ある男性のスタッフは、「自国に帰らせてほしい」と泣きながら懇願してきたほどです。私にも「無料の飛行機を用意するのでスペインへ帰国してくれ」とスペイン政府から連絡が入りました。

それでも私は経営者として帰るわけにはいきませんからね。すでに進行中の案件が人材不足で軒並みストップし、危機的状況に陥りました。それでも日本のお客様の中には、こちらの状況を察して思わぬ待遇をしてくださったんです。まだ完成していない案件の売上げを前倒しで振り込んでくれたのです。私の国ではあり得ないような対応ですよ。おかげさまで何とか乗り切れた。あの当時はお互い助け合う雰囲気があったのかもしれない。でもこのとき、日本の企業文化は素晴らしいと心から思いましたね。いまでも本当に感謝しています。

ゲーム業界の会社は資金調達が必要というイメージがあります。

おかげさまで創業から無借金経営を続けてきました。というより、創業時は資金が必要ですが、金融機関は融資をしてくれませんでした(笑)。でも最近、資金需要はないのですが、融資の営業が増えてきましたね。これが日本の商習慣のようです(笑)。

ただし、財務的な基盤を強化するために、コストはとことん切り詰めていますよ。たとえばコーヒーマシンやお菓子を置くなどの福利厚生はまったくありません。スパルタというほど経費は厳しくみています。

インディーズゲームなどのデジタルコンテンツを配信するサイト「PLAYISM(プレイズム)」の運営もされていますね。その狙いは?

当社のメインの仕事は、日本の(主に大手の)ゲームを海外向けにローカライズすることです。しかし日本を含めた世界各国には、レベルの高いインディーズゲームがたくさんあるんです。10年後を見越して、実力のある若手開発者とのネットワークを構築するしかけづくりの意味もあり、2011年に「PLAYISM」の運営を開始しました。

「PLAYISM」では世界のインディーズゲームを日本語で配信するとともに、日本のインディーズゲームを海外にローカライズして配信しています。日本国内のインディーズゲームを海外で配信する日本法人のサイトは、世界でひとつ。またゲーム開発の専門学校「HAL大阪」とのコラボレーションで学生が開発したゲームを世界に向けて販売するというプロジェクトもやりました。「PLAYISM」は現時点では、大きな利益をあげられる事業ではありません。でも将来のゲーム業界を引っ張っていくのは間違いなく若い世代です。将来のゲームクリエイターとのネットワークをつくっておくことは、将来への投資です。

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では最後に10年後の目標をお聞かせください。

今後も日本に根を張って、ゲームのローカライズ業界でトップになること。そのために現在は営業を強化しています。この市場は激しく動いています。この業界で生き残るためには、自ら変化を起こすか、周りの変化に素早く対応するかのどちらかです。当社の場合、めざすのは後者。現在はタブレットの性能がよくなっていますが、今後はGoogle Glassや時計といった新たなデバイスに向けたゲームが求められるはずです。その変化に素早く対応できる環境を準備しておかないといけない。スタッフにも日ごろからアンテナを張って必要な知識やスキルの習得を心がけてもらってます。
スペインには帰りませんよ(笑)。親は帰ってきてほしいみたいですけどね。でも僕はここ日本で勝負していきます。

日本語版PLAYISM
http://www.playism.jp

▼イバイ氏が「ローカライズ戦略」について語る

【海外ビジネスセミナー】
海外に向けたブランディング ファン獲得の鍵は“ローカライズ”戦略!(2016/9/12開催)

https://www.sansokan.jp/events/eve_detail.san?H_A_NO=21453

 

2013年12月09日
株式会社アクティブゲーミングメディア
代表取締役  
イバイ・アメストイ 氏
設立/2008年 従業員数/38名 事業内容/マルチプレイ、オンラインに対応したゲームのローカライズのほか、インディーズゲームを配信するサイト「PLAYISM」(ルビ:プレーイズム)を運営する。
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