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引き継いだ最大の価値は「仕入先」 国内最大級の工具通販サイトへ

2013.01.10

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働き方が一転  会社を“清算”し、再出発

かつては、メーカーから仕入れた工具類をホームセンターや金物店向けに卸す商売をしていたが、昨年DIY工具の通販サイト
「DI Y – T O O L . C O M 」での売上げにすべて切り替わった。「サイトを開設してからの10 年で売り先が100%入れ替わったことになる」と山田氏。そこには義父から三代目を継いだ山田氏ならではの決断があった。

大学卒業後リクルートに入社。その後結婚した妻の実家は工具卸業を営んでいた。「娘はやるが、会社を継いでほしい」。もともといつかは自分で起業したいと思っていた山田氏は「業種が何であれ経営をやらせてもらえるなら」と“結婚の条件”をのんだ。入社初日スーツにアタッシュケースのいでたちが場違いなことにすぐに気付いた。作業着に身を包みトラックで町の工具店、金物店を「100円単位の商品まで毎日通って運ぶ」日々が続く。量がさばけるホームセンター向けの仕事も、店ごとに違う値札を貼るという手間のかかる作業まで引き受けざるを得ず、利益が出ない。景気はますます悪くなり、不渡り手形を食らうことも増えてきた。

「このままやったら潰れる」。そう感じた山田氏は義父に「廃業させてほしい」と頼み込む。先代から継承した商売。それを自分の代でつぶすわけにはいかないと義父は山田氏に「好きにやってくれていいから何とか続けてくれ」と全てを委ねた。だが、15人の社員に向けて「今期赤字やったら会社を清算する」と危機感をあおっても社員の定時退社は続いた。前職で「売上達成できるまで帰られへん世界」にいた山田氏には信じ難いことだった。案の定、黒字化は果たせず、当時の体力で支払える給与を改めて示し、それでも残る意思を示した社員との再出発を決断した。

任せる側、任される側の覚悟が生んだ新ビジネス

山田氏はその1年ほど前から工具のネット販売に手ごたえを感じていた。「ネットの知識なんか全くなかった」山田氏が会社の一室で孤軍奮闘で始めていた新規事業だ。昼間の仕事を終えては夜中にたった独りで作業を行う日々。月商100万円に達するのに1年半を要したが、その後はとんとん拍子に売上げは伸びていった。「うちの強みは仕入先とのネットワーク。初代から長い時間をかけて築いてきたメーカーとの信頼関係があったからこそ実現できた」と、当時を振り返る。

その後、新しい社員も増え、経営も安定したタイミングで真っ先に取り組んだのが、「百害あって一利なし」と感じていた手形取引の廃止。年間数億円の取引があったホームセンターに「現金取引に変えてもらえないなら取引をやめたい」と申し入れ、交渉は決裂。取引はなくなったがそれが成長へのステップになると信じた決断だ。そして一昨年、すべての仕入れ先、売り先と手形取引を廃止した。

「社内や業界の常識は非常識」と“悪習”を次々に打ち破れたのは「娘婿」という立場だったからかもしれない。先代は一昨年山田氏に社長を譲り、会社が最高益を実現したのを見届けて、昨年2月に亡くなった。「文句ひとつ言わず、全てを任せてくれた。それはもうすごい人やと思いますね」。
任せる方と任される側の覚悟が生んだ業態転換はさらに飛躍を遂げようとしている。

★山田社長の「腹の据わり方がハンパない」ロングインタビュー
  https://bplatz.sansokan.jp/archives/12

株式会社 大都

代表取締役

山田 岳人氏

http://www.diy-tool.com/

創業/1937年 従業員数/24名
事業内容/電動工具、建設機械、作業工具など35万点をそろえる通販サイト「DIY - TOOL.COM」を運営。昨年は法人向け専用の「モノトス」も立ち上げた。