素手で挑んだ医療器開発、10年越しで商品化

救急患者の心臓、脳の状態を確認する際には心拍や血圧、瞳孔の状態などを計測する。このうち瞳孔計測は、ペンライトの光を目に当てた時の瞳孔の変化を確認し、定規を使って直径を測るというアナログな方法が今も使われている。

人の目で確認するため判断ミスが生じるのはどうしても避けられない。「ヒトミル」はこの作業を自動化し、左右の瞳孔の表面積の変化、直径をデータで記録できるようにした装置だ。

ゴーグル部とモニタリング用のディスプレイ(タブレット)から構成されている。

カメラ販売店を営む太田氏のもとに地元大学病院の救急医から「瞳孔計測値をデジタルデータで残したい。そのための装置を作れないか」と相談が持ち込まれたのは2009年のこと。

カメラメーカーに打診したが「市場が小さすぎる」と色よい返事が得られなかった。それなら自分たちでと、ソフトウエア開発業を営む宮永氏に相談し、アイデアをかたちにした。

「当時はまだ直径を計測できる機器がなかったため、代わりに瞳孔の境界を識別し表面積を測る方法を提案した」。すると救急医から「瞳孔は楕円形になることもあり表面積で測った方がむしろ正確」と高評価が得られ、製品化へと舵が切られた。

製品にするため、宮永氏は金属加工業を営む浦谷氏に依頼した。初めは穴を開けた水道管にゴーグルを組み合わせるところから試作がスタート。

基板から発する電磁波を抑えるための方法を公設の試験場に通いながら解決していった。「全員が医療の素人。一つひとつ手探りしながら解決していった」と宮永氏は振り返る。

初期の試作品。

6年がかりで製品化できたところで思わぬトラブルが生じた。医療器を製造・販売するにはそのための免許が必要で、近道をするためすでに免許を持っている会社と組むことを考えていた。

ところがその会社が突然抜けたいと言ってきたのだ。やむを得ず浦谷氏の製造子会社ウラタニ・ラボが一から免許を申請することに。そのための製造ラインを整え、品質管理監督システムにのっとって膨大な資料作成にとりかかった。

さらに4年の歳月を要し、販売にこぎつけたのは2018年8月のことだった。

瞳孔を近赤外光で認識、眼球の動きを自動追尾し認識できる。

3人は関西学院高等部時代の同級生。ここまでの苦労を振り返り「巻き込んで申し訳なかった」と頭を下げる太田氏に「太田からはこれまでもいろんな話を持ち込まれて最後までできたんはこれが初めてや」と冗談めかして話す宮永氏の横で「お互いの信頼があったからこそできた」と冷静に語る浦谷氏。

現在は製品を扱ってくれる大手医療機器代理店の協力を得ながら本格的な販売が始まったところだ。「医療現場からの手応えは大きい。瞳孔の反応で脳にかかわる病気の兆候をつかむことができるかもしれないとの話も聞いた」(太田氏)。

素手で挑んだ成果が医療に新たなインパクトをもたらそうとしている。

浦谷氏(写真右)、太田氏(写真中央)、宮永氏(写真左)

(取材・文/山口裕史)

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2019年02月01日
株式会社ウラタニ・ラボ
代表取締役 浦谷英樹氏(浦谷商事株式会社 代表取締役)
医療機器製造部 太田育宏氏(株式会社三晃カメラ商会 代表取締役)
医療機器製造部 宮永一氏(株式会社ヴォルテック 代表取締役)
事業内容/医療機器の製造・販売

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