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映像で技術を共有、医師の自己研鑽の場に

2019.01.31

心筋こうそくや狭心症など心血管にかかわる病気の治療には、細い管を血管内に通すカテーテルをはじめ高度な医療器具が使われる。それだけに医師の技量が問われ、手術のやり方も違いが出やすい。

そこで心血管領域では、門外に出ない技術を医師間で共有、考察し、治療成績の向上に役立てようと、大型スクリーンに映し出された手術のライブ映像を見ながら公開で議論する場が設けられており、大きな学会では6千人もの参加がある。

ハート・オーガナイゼーションは2000年の創業後間もなくから、こうした学会の事務局業務を受託してきた。

「医師に伝わってくる治療技術の情報と言えばかつては製薬会社を介して伝わるものばかりで、バイアスのかかった内容だった。こうした情報も重要だが、医師が主導して手技を発信できる場があることで初めて情報のバランスが取れ、技量の向上につながる」と感じ、そうした場の意義を感じてきた。

心血管分野の手技レベルは日本が世界でも突出していることから学会には遠く地方、さらには海外から学びに来る医師が少なくない。

そこでライブ映像を扱う学会の様子をどこにいても共有できるよう、2014年に症例検討プラットフォーム「e-casebook」をインターネット上で開始。すると中東や中央アジア、アフリカなど幅広い地域からの閲覧が多い時で1600件ほどにまで増えたという。

マルチデバイス対応。オンラインで画像や映像を見ながら議論でき、画像には直接書き込みもできる。

「e-casebookで見た海外の医師たちが、実際に会場でライブ映像を見て、日本の医師と交流したいと学会に参加するケースが増えている」という好循環も生んでいる。

e-casebookでは、世界中の医師と症例検討ができるさまざまなディスカッションフォーラムが運営されており、自分に合ったフォーラムを見つけ参加することができる。

実は学会はライブ映像を共有する場とは別に、テーマごとに議論をする分科会などがあり「そこで医師同士が個別に情報交換できる場が貴重」なのだという。

そこで昨年4月から「e-casebook」上にWeb研究会の場を新たに開設。そこでは主宰者が手がけた手術映像・画像と解説を載せることができ、主宰者の許可を得てその研究会に参加したメンバーは自由に質問もできる。現在はその研究会の数が30まで増えている。

医師が院内外を問わず、指定した人とだけクラウド上で症例を共有・検討できるサービス。ウェブ上でDICOMを再生できるビューワーや、描画機能を備えたコミュニケーションスペースがあり、院外の医師とのやりとり全てをe-casebookで完結させることができる。

現在は専門医の領域がより細分化され、それぞれの領域の情報の“たこつぼ”化が進んでいるため、こうした場に対するニーズがますます強まっている。「画像診断を活用する領域は眼科、消化器分野などにも広がるとともに医療機器もどんどん進歩している。

新しい医療技術を学ぶインフラの役割を果たし、地方そして世界の医療格差をなくすことにつながれば」と国内外でさらに認知度を高めようとしている。

代表取締役 菅原 俊子氏

(取材・文/山口裕史)

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株式会社ハート・オーガナイゼーション

代表取締役

菅原 俊子氏

https://www.heartorg.co.jp

事業内容/医師向け症例検討プラットフォームの運営