産経関西/産創館広場

心に残る画面 彩りで演出

2013.07.01

大阪天満宮の近く、天神橋筋2丁目商店街を南下すると、トロフィー型の看板が見えてくる。思わず記念撮影をしたくなるユニークな看板を設置しているのは、この地で67年間にわたって営業を続けているエヌエス(大阪市北区)だ。
文具の製造・卸売業で創業したが、顧客の廃業などの影響もあり、現在はトロフィーや旗、腕章、各種記念品の小売業へ転換している。小売りを始めた当初は順調だったが、バブル崩壊後は大口取引の見込める法人顧客でコスト削減が徹底され、厳しい経営状態が続いていた。

転機は2000年。業界ではまだ珍しかったインターネット販売に乗り出したのだ。当時、取締役だった赤尾江里子社長は自らネットショップ講座に通い、作成と運営を学び、今ではネットショップの売上高が全体の7割を占めるまでに成長している。ネットショップにより、対応エリアが広がり、法人需要のほか、地域の会合や一般家庭にまで顧客層は拡大。しかし、新規客とリピート客を増やしてきた理由は、スタッフの対応力にもある。その商品群は、イベントや式典で渡すトロフィーなどの記念品と、業務管理のための腕章・名札に分けられる。既製品だけでも多種多様な商品がある中、顧客の要望がカタログにない商品であれば、スタッフが総出で探し出す。

また、商品の特性上、メッセージや名入れなど顧客の要望はさまざまで、様式・技術も多岐にわたるため、商品の大半がセミオーダー品となる。商品を使う状況や納品日・予算などをきめ細かく聞き、提案を行うことで、顧客が納得する商品を提供している。時には納品先の式典を訪問し、現場を確認し、梱包(こんぽう)などが運営を妨げていれば、改善につなげる。式典の進め方自体をサポートすることも増えているという。

同社のモットーは「Happy Communication Design」。近年では自社でイベントを開催するなど人をつなぐ場づくりにも積極的に取り組んでいる。今後も多くの人の心に残る場面を、より鮮やかに彩っていくことだろう。

(大阪産業創造館 プランナー 荒井祐己子)

エヌエス

▲エヌエスの赤尾社長(左から2人目)とスタッフ

エヌエス株式会社

http://www.enuesu.co.jp/