水ならではの表現力で空間を演出
たくさんの水糸をたらしてカーテンに見立てたり、音楽のリズムに合わせて水の勢いに強弱をつけたり、壁面を使って人工の滝をつくったり……。噴水メーカーと称するが、水を使った空間演出業といったほうがしっくりくる。
代表作は水でさまざまな文字や模様を描き出す「スペースプリンター」。中でも時刻を表示する「水の時計」(JR大阪駅)は、CNNが選出する「世界の美しい時計12」に入り、一躍広く知られるようになった。
上部に12ミリごとに配置された直径2.5ミリの噴出口を持つノズルの数は384本。それぞれのノズルから落ちてくる水滴が光に乱反射して白くなった部分の並びが全体で数字に見えるようになっている。「水を使って空間に印刷するからスペースプリンターです」と阪上氏。
文字や柄を正確に表現するためのポイントが、落下する水をきれいに止める「水の切れ具合」、そして水が落下するタイミングと量を決める「バルブ制御の精度」だ。
「切れ具合」についてはコップにたまった水にストローを入れ、上の穴を指でふさいで持ち上げたときのことを想像するとわかりやすい。「指を離すと水が落ちて、ふさぐとぴたっと止まるでしょう。このときのストローがノズル、指が弁に当たります。しっかり切れるようにするために最適なノズルの太さと、弁までの長さを探し当てました」。
「バルブ制御の精度」については100分の1秒単位で弁の開閉を制御できる性能が問われ、「誤差なく制御できたのがある1社の電磁弁だけでした」と振り返る。
水によるさまざまな表現を可能にしているのは、ノズルというハードとこれを制御するソフトの組み合わせだ。そのバリエーションをひと目で理解できるようにと創業と同時にスタジオを開設した。「9.5メートルの天井高を持つスタジオには多種多様なノズルがそろっており、これを制御しながらお客様が表現したいイメージに近づけていきます」。
壁の表面形状の違いでそこに流れる水がアメーバ状の模様をたくさん作ったり、錯覚で水が上に動いていくように見える現象を起こし、それを再現して提案したものも多い。また、グランフロント大阪の大階段に水を流す提案では、落ちていく水の振動が重なり合って波を引き起こす現象を利用して海岸線に波が寄せては返すような音を演出した。
「25年以上水にかかわってきましたが、いまだに新しい発見があります。計り知れない水の力をもっと探求していきたい」と不思議な水の世界に魅せられながらビジネスを追求している。
(取材・文/山口裕史)
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