デジタルマネキンで人の動きを可視化 健康、スポーツ、エンタメ分野に商機
パソコン画面上に映し出されたのは、デジタルマネキンと呼ばれる人体モデル。カメラで撮影した動画などの情報をもとに体型や動きを正確にかつ自然に再現してみせる。エルゴビジョンは今、このデジタルマネキンを使ったビジネスに挑んでいる。
同社は、オージス総研の画像処理などの研究開発業務を担っていた部隊が7年前にスピンアウトして設立された。得意とするのは画像を使って課題を解決するソリューションシステム。道路面や橋梁下面を撮影してひび割れを自動検出し、修繕が必要な箇所の緊急度をランク付けする「道路・鉄道の維持管理に関するシステム」は広く採用されている。さらに「画像処理技術を人の健康や暮らしへ」と考える中で、力を入れてきたのが、住宅設備・家具等のユニバーサルデザイン設計支援業務だ。洗面台や浴槽を再現した部屋に人体モデルを組み合わせ、使い勝手や快適性、安全性を検証するシステムを提供している。
人間の状態を知り、課題解決につなげる上で欠かせないのが、状態や変化の可視化。「人体モデルを使えば、ユーザーによりわかりやすく効果を伝えることができ、ビジネスチャンスは広がる」と廣瀬氏は考えた。だが、体型や動作のモデリングに必要な機器は非常に高価で、「システムを普及させるためには少なくとも100万円を切る必要がある。そのためにはどうしても安価な計測機器が必要」と悩みを抱えていた。
このハードルを一気に下げたのが2010年に発売されたマイクロソフト社のキネクトだ。カメラで映したプレイヤーの形状や動きを画面上に再現して遊べるゲーム機器で、この3次元モデリング技術の研究利用が可能となった。同社は将来の商用利用の開放を見越してシステム開発に着手。いよいよ2012年からは商用利用が可能となり、キネクトを利用したデジタルマネキンシステムの販売を今秋から開始する。
女子栄養大学の一般向け講座「ヘルシーダイエットコース」とのコラボにより、自分の体型が、食事や運動に気をつけることでどう変化するのかを客観的に知ることができるシステムを開発。データはパソコンやスマホで閲覧することができ、手軽に自身の健康をチェックすることが可能になる。
「ゴルフのスイング、ダンスの動きを分析して、どこにどれだけ余分な力がかかっているか、どこを鍛えなければならないかを簡単に知ることができる」とICTがもたらす可能性を語る廣瀬氏。今後は、「チェックアンドソリューション」をキーワードとしたアプリケーションの開発をめざし、さまざまな企業との連携も視野に入れている。
株式会社エルゴビジョン
代表取締役
廣瀬尚三 氏
設立/2005年 資本金/3,450万円 従業員数/14人
事業内容/画像処理、人間工学技術の研究・開発、ソフトウェア中心のシステム
開発および販売・コンサルティング。