産経関西/産創館広場

目指すは「全員正社員のIT企業」

2015.05.18

スマートフォンの登場とともに急速に拡大したアプリ市場。米アップル社の「iPhone(アイフォーン)」が日本で発売される前から研究を始め、会社を成長させているのがMACASEL(マカセル)株式会社(大阪市淀川区)だ。

主事業はシステムエンジニア派遣だが、代表取締役の田坂敏章氏はエンジニアのキャリア設計に課題を感じていた。「年齢が上がると派遣先に受け入れられにくい」業界では、正社員ではなく契約社員や登録社員として派遣する企業も多い中、同社は全従業員を正規雇用し、「定年まで働けるIT企業」をめざし、派遣事業以外のビジネスに取り組み始めた。

アプリ開発への進出もその一つ。当時の日本では珍しかったアップルの携帯音楽プレーヤー「iPod touch(アイポッド・タッチ)」のアプリを研究していた社員を中心に、新規事業プロジェクトを発足。当初は自社製品の開発を検討したが、普及には莫大(ばくだい)な時間とコストがかかるため断念。わずかな投資で自社にノウハウが蓄積できる「アプリ開発のスクール事業」を開始した。

受講料無料でスタートしたスクールには、リーマン・ショックの影響で業務量の減った同業他社が集まり、本業のネットワーク拡大に繋がった。最近ではアプリ開発を行う会社は多いが、多様化・高度化する使われ方に対応できる企業は多くない。同社は、一般向けの通信販売アプリから法人向けの業務用アプリまで、さまざまな開発の案件を請け負っている。また、発売間もない腕時計型端末「アップルウォッチ」のアプリもすでに開発している。

「社員の生活を安定させ、やりたい仕事をできる会社にしたい」と田坂氏は語る。そのため、年功序列による人事は一切行わず実績を重視。リーダー職もやりたい社員がチャレンジする仕組みを取っている。採用面接時から会社の方針を丁寧に説明することで退職者も減っているという。開発力が鈍化しないのも、社員がやりたいことにチャレンジできる風土があるからこそだ。

今年からさらなる成長をめざし5カ年計画をスタートさせた。目標はもちろん「定年まで働ける次の仕事づくり」だ。「社員にいい会社と言ってもらえるように。次代にしっかりした会社を渡せるように」。田坂氏の経営者としてのチャレンジは続いている。

(大阪産業創造館 プランナー 荒井祐己子)

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▲MACASEL(マカセル)株式会社(大阪市淀川区)の田坂敏章社長

 

MACASEL(マカセル)株式会社

https://www.macasel.co.jp/

住所/大阪市淀川区宮原4-1-6  アクロス新大阪10階 創業/2007年2月5日 資本金/2,500万円 従業員数/43人