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【バイオニクス長編】人生は一度きり、世の中を変えるような製品を生み出したい

2014.07.09

>>> 個人向けサービスに特化して、成長を続けてきたのですね。

個人向けのサービスはクレームも多いですし、すぐに対応しなければならないので手間も時間もかかるんです。だからこそ、うちのような小回りの利く会社が強みを発揮できる。大変なことは多いですよ。でも、ユーザーの声を直接耳にする機会は非常にありがたかった。クレームも含め、温めて次につなげていけるのですから。

 

>>> ご自身は文系で、社員たちはほとんどが理系だそうですね。

理系の人は、インプットとアウトプットが一貫していないと気持ち悪いみたいですが、開発のプロセスには多くの不確定要素、ブラックボックスが存在するんです。そこには、人の機微だとか、世の中の雰囲気だとか、いろいろな要素が絡み合ってくる。そこを柔軟に受け止めるのは、文系的な発想が役に立つと思います。業務としてものを作るのではなく、製品を使う人が感動するか?びっくりするか? ニーズから逆算して製品をつくっていく発想ですね。人との関わりの中で何かを捉える文系の力と、理系の理論を融合したものづくりをしていきたいですね。

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>>> 経営をする中で、最大のピンチは?

リーマンショックの後、30人以上いた社員が8人にまで減りました。周囲からは、「一度会社を畳んで再度やり直したらどうか」と言われ、本当に苦しい日々でした。今の日本では、会社を潰したら、まだまだ個人の人生に大きな影響が出る。生々しい話ですが、数年間はクレジットカード一枚でさえ、作れなくなりますから。日本では、起業はリスクのあることなんです。それ相応の覚悟が必要なことだと思います。

しかしその分、情に触れることもまた多い。給料の遅配があっても、ついてきてくれた社員たち。自宅のガスや電気が止められた時は『クリスマスみたい!』と、目を輝かせながらローソクを灯してくれた娘たちに涙が出ました。苦しい時期をともに耐え忍んでくれた社員や家族はもちろん、お客様の喜びの声、支えてくれた商社時代の先輩や同僚。人との絆を感じる瞬間がとても多くありました。

 

>>> 事業を通して、最も嬉しい瞬間は?

あるハウスメーカーとタイアップで、一定のグレード以上の家に、当社の認証システムが標準仕様で取り入れられることになりました。モデルハウスなどを見学させてもらうと、指を入れてドアが開く瞬間、来場された方が感動してくれるんです。使う人に、驚き、感動を生み出せた瞬間は、何にも代えがたい喜びがありますね。

クレームがあっても、それを改良するたびに「よくなったね、使いやすくなったね」と声をかけてもらえることもある。喜びは常に、使ってくださる方のそばにあります。

>>> 今では海外にも製品を輸出するようになりました。

アメリカでヒントを得て、メイドインジャパンの製品として形にできたことは、とても誇らしく思っています。経済産業省が主導する組織「産総研」で、日本の独自技術として国際規格にしようと後押しも頂いています。アメリカには今も静脈認証はなく、今後も積極的に売り込んでいきたいですね。

余談ですが、学生時代に商社を志望した動機は「日本を世界に売り込みたい」と思ったから。自分がメーカーになるとは想像もしていませんでしたが、その気持ちは今も変わっていません。

 

>>> 今後の夢、目標は?

当社の理念に賛同していただける方々と一緒に、世の中を変えるような製品を生み出していくことが夢。昔の日本には、クレームを温めて製品に活かす風土があった。だからこそ、ものづくりが強かったんだと思います。今は短期的な収益ばかりを見るようになって、次のシーズを温める余裕がなくなりつつある。開発資金を確保することはもちろん大事ですが、マネーゲームの手段ではなく、中身を理解した上での出資を募りたい。上場は創業時からの目標ですが、今もその内容にこだわりたいと思っています。

そして個人的には、リーマンショックなどで迷惑をかけた方々に対し、恩返し、罪滅ぼしをしていきたい。これは一生をかけて、やっていきたいと思っています。

人生は一度きり。仕事を通して、この人生で何をするか。どこで命を燃やすか。苦しいこともあるけれど、やはり、ビジネスほど手ごたえのあるものはない。周りのサポートのおかげで好きなことをやらせてもらってきたのだから、世の中に、日本という国に、貢献したいと思っています。

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バイオニクス株式会社

代表取締役社長 

須下幸三氏

http://www.bionics-k.co.jp/

血流認証による人物識別技術の企画・調査・研究開発。一般住宅用へのエントランスシステムの導入・メンテナンスが強み。「鍵を持たない利便性」と「紛失・盗難リスクを回避する安心」を両立する。