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【ナビバード長編】幾多の苦難乗り越え切り拓く起業家の道

2014.07.09

>>> どう切り抜けたんですか?

そのころ並行して大手企業と組む話が進んでいました。交渉先は、以前勤めていたカタログ通販会社と競合する大手の会社です。先方ははじめ「こんな会社つぶしてうちの社内でやってよ」と話を持ち込んできたのですが、競合会社にごそっと移るのは倫理的にもまずいだろうと。

そこで出資で考えていただけないかという話をしました。ちょうどその会社が新事業を育てるためにベンチャーファンドを設けていて、その出資先として投資してもらえることになりました。資本・業務提携をして、75%の出資を受けました。

「JSHOPPERS.com」は、複数の異なるブランドをワンストップで購入できるポータルECサイトです。なので、出資を受けた通販会社のほかにも多くの通販会社に入ってもらい、いろいろな会社の商品が選べることを特長にしていました。大手のグループ会社ということで信頼も得られやすく、営業はしやすかったですね。

ただ、資本を受けている分、全体の売上げのうち7割ほどはその会社の売上げが占めるようにプロモーションをかけていきました。提携して5年ほどは問題なくやってこられたのですが、2009年にまた転機がやってきます。

その会社でベンチャーファンドの立ち上げから関わってきた財務担当役員の方が辞めて、ベンチャーファンドそのものが宙ぶらりんになってしまったのです。その後、何も経緯を知らない担当者が代わりにやってきて、複数の通販カタログ会社の商品を売っている「JSHOPPERS.com」のやり方にケチをつけてきました。

「どうして競合他社の売上げに貢献しないといけないのか。うちの商品だけ売れ」と。「言うことを聞かないなら株主として社長を解任する」と脅しまでかけてきて、交渉は半年くらいかかりました。

結局、資本提携関係を解消することとし、全売上げの7割を占めていたその会社のECサイトだけを切り売りし、残りの売上げで事業を継続することにしました。

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>>> 売上げが3割にまで減ってしまった。

従業員は35人から15人に減り、中核の社員も先方にとられてしまいました。かといって、家賃やシステムの運営・維持などの固定費はそれほど減らなかったので、たちまち赤字に陥りました。2011年は、それまで10億円あった売上げが3億円に減り、9千万円の営業損失を出し、一気に債務超過に陥りました。

銀行からの借り入れもできなくなり、取引条件も悪くなりました。家賃の安いビルに引越しをし、外部の専門化との顧問契約を解消したり、システムを内製化するなどして経費を極限まで抑えました。

一方で、新たな取引先の開拓にも力を入れました。大手企業から日本の伝統工芸を海外に販売する専門ECサイトを立ち上げたいということで運営を受託することになりました。実は、私が日本の伝統工芸品が好きで「JSHOPPERS.com」の中に伝統工芸品を売る“専門店”のようなページをつくっていたのです。そこに目をつけ、全体から切り離して別サイトを立ち上げました。「JCRFTS.com」というサイトです。

決して売上げは大きくはありませんでしたが、そのおかげで従業員の雇用を維持できました。そのほかにも受託ビジネスが新しい展開として加わるようになりました。それまでは、大手の資本に頼った経営をしていましたが、独り立ちして、本当の意味で事業の再構築ができたと思っています。

昨年一気に円安に進んだことが当社にとっては追い風となりました。海外で購入されるお客様にとっては商品の価格が下がり、こなれた価格で買えるようになったからです。そのおかげで売上げも3億円から5億円まで戻り、何とか利益も出るようになってきました。

 

>>> よく乗り越えられましたね。

「負けてたまるか」という社員の団結力の賜物ですね。歯を食いしばりながら、どう経費を抑えながら販売拡大策を練っていくかを考えました。現在、「JSHOPPERS.com」には55万人分の会員データベースがあります。

しかし、中には今ではほとんど購入されなくなった遊休会員の方もおられます。購買傾向はデータベースからつかむことができるので、なぜ離れてしまったか分析し、どういうアプローチをすれば購入につながるのかを考え、クーポンやセールなどの方法で、眠りから起こす努力をしています。

海外向けの通販サイトは競合他社も力を入れてきています。うちの強みは、お客さんがいろいろな会社から購入した商品を別々に送るのではなく、それらをまとめて配送できることです。それによって配送費を大きく抑えることができます。

ようやく経営基盤ができたので、これからは外的要因に左右されない独自のサービスを確立していかないといけないと思っています。これからがいよいよ真の自立のとき。創業から10年が経ってやっとスタートラインに立てたのかなという思いです。

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株式会社ナビバード

代表取締役 

山中和也氏

http://www.navibird.co.jp/

2004年創業。「インターネットを通じて、日本の物品を世界に広めること」を経営理念に、海外向け専門のネット通販事業を展開している。