産経関西/産創館広場

業界ニーズつかんだオリジナル研磨機

2014.02.24

タングステン、インコネル、ハステロイ、コバール―。聞きなじみがないが、光通信や原子力発電所、医療機器などの重要な部品に必要とされ、削ったり加工したりするのが難しい「難削材」だ。これらを高精度・ミクロン精度で微細に加工するのが、三恵(サンケイ)ハイプレシジョン株式会社(大阪市平野区)。

同社は、各種マシニングセンタやワイヤカット放電加工機のほか、画像測定器や3次元測定機などの設備を持ち、インフラ産業を担う大手メーカーなどから依頼される多品種少量・中量生産で大きな信頼を得ている。

リーマン・ショック後の影響は大きかったが、経営努力により赤字を免れた。2009年7月に専属営業担当を置き本格的な販売を開始したのが、独自の画期的なシステムを採用した「揺動式遠心バレル研磨機」だ。

開発は落合社長のアイデアによるもの。バリ取りや研磨を行う加工対象物(ワーク)を入れたタンクを傾斜させて揺らすように動かすことで、ワークが常に水と研磨材に囲まれる環境を実現。従来のバレル研磨機の難点だった打痕傷や変形・歪みが抑えられるようになった。

下請けがメーンだった同社が自社商品の開発環境から営業体制までを整えるには、投資を伴うため大きな経営判断が必要だった。しかし、多くの微細精密加工を扱い、自社でもバレル研磨を多用し、業界のニーズやバレル研磨の課題を的確につかんでいたからこそ生まれたアイデアだ。

経営判断の正しさを裏付けるように、自社商品のバレル研磨機の販売実績は想定以上に伸びており、売り上げの10%強にまで成長。精密小物や薄物ワーク、微細加工品など想定していたターゲットだけでなく、貴金属の研磨においても引き合いが来るようになっている。

さらに揺動式遠心バレル研磨機で「卓上型」や「2段セル容器8槽型」がラインアップされるほか、同製品の技術を応用し、粒子の直径や比重が異なる粉体を効率よく分散させて混合する「紛体分散混合機」も開発した。粉体分散混合機の新たな改良に向け、国の試作開発補助金も獲得。常に新しいアイデアを生みだし、実現に挑む同社の次の展開が楽しみである。

(大阪産業創造館 シニアプランナー 多賀谷元)

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▲三恵ハイプレシジョンが開発した「小型遠心バレル研磨機」と「粉体混合機SANMIX」

 

三恵ハイプレシジョン株式会社

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