試作屋2代目社長の新たな戦略
職人のノウハウと最新設備との総合力で、試作・モデル製作の分野において、関西の大手企業から長年の信頼を得ているのが、井上模型製作所(大阪市北区)だ。
同社は、1971年の創業以来、木材や樹脂の切削加工をはじめとした数多くの試作品を製作し、高い技術力を持つ企業として成長してきた。
1999年には第2工場を設立。最新の5軸加工機を柱とするアルミなどの金属切削のために、常に気温を一定に保てる温度管理システムを導入し、高精度・高速の加工を実現する環境・設備を整えた。
中でも特長的なのは、21台という従業員数よりも多いほどのCAD/CAMを導入したことだ。
その結果、最初から最後まですべての工程を担当者が一気通貫でこなすことが可能となった。一人が責任を持って一つの案件に対応することで、従業員のスキルとモチベーションが格段に高まっている。
また、大阪市内の住宅街にある工場は製造工場とは思えないおしゃれな外観だ。防音・振動対策はもちろんのこと、外観にも周辺住民に配慮するなどあらゆるところに工夫が凝らされている。
2013年より社長になった井上佳宣氏は、常務時代から変化の激しい環境に合わせた新しい取り組みに積極的にチャレンジをしてきた。
創業以来、開発中の試作品など、大手企業の機密情報を扱う案件が多かったことから、長年営業やPR活動に積極的になれなかったが、2006年にはHPを開設。新規顧客の開拓、展示会出展や他社との連携など、試行錯誤をしながらも、自ら積極的に取り組んできた。
その結果、今まで取引がなかった多くの企業から開発・試作にとどまらず、さまざまな加工で相談を受けるようになった。現在では取引先は600社にまで広がった。
社長になって2年。採用や人材育成などさまざまな経営課題に苦労しながらも、低価格の試作品に対応するための海外調達や、ものづくり補助金を獲得するなど、常に新しい取り組みにチャレンジする井上社長のこれからの活躍が楽しみである。
(大阪産業創造館 シニアプランナー 多賀谷元)
▲試作・モデル製作を手掛ける井上模型製作所
株式会社井上模型製作所