海の天然資源をアップサイクルしたナチュラルコスメ
奏波の代表、喜多氏は「海が好き」がモチベーションの源泉である。家族でサーフィンを愛し、ブランド名の「KANAHA」にも“波を奏でる”という想いを込めた。子どもの頃から海に馴染み、漁師である親戚から、浜辺に打ち上げられたイカの甲を「傷口につけるとすぐ治るよ」と言われ育ってきた。「良いものなのに捨てられてしまう海の天然資源を活かしたい」。その思いが喜多氏のコスメ開発につながっている。
「KANAHA」のナイトジェルマスク美容液はキチンナノファイバーを使用している。キチンナノファイバーとはカニ殻の主成分であるキチンを特殊技法でナノレベルの繊維にした新素材。保湿作用があり、角質層を補修してバリア機能を強化する効果があるという。
キチンナノファイバーを知ったのは、同素材を研究開発し、製造販売する鳥取大学発のベンチャー企業・株式会社マリンナノファイバーを通じてだった。「化粧品関係のイベントでは、新素材の開発を手掛ける大学やベンチャー企業のブースを真っ先に訪れる」という喜多氏が出会いを引き寄せた。
キチンナノファイバー配合のナイトジェルマスク美容液は、大量に廃棄されるカニの殻を日常使いのスキンケア商品に再生させたという着眼点が評価され、2023年のサステナブルコスメアワードで表彰されている。開発当初から製品化を待ち望んでいたファンたちのリピート買いに支えられる一方、オンラインや百貨店での出品でじわじわと認知度を高めている。
(取材・文/荒木さと子)