子どもの未来を創る音楽フェスで、誰もが夢をみることができる社会の実現へ
親子で楽しめる音楽フェスとして2017年から始まった「ROCKS FORCHILE(ロックスフォーチル)」(以下ロッチル)は、「子どもたちが夢をみるため、未来で夢をかなえるため」をコンセプトに、世界で活躍するアーティストやダンサー、DJ、スポーツ選手、絵本作家や、業界の第一人者などから、直接子どもたちが教わったり、ステージで一緒にコラボするなど、さまざまな経験ができるイベントだ。
企画運営する株式会社RFCは児童養護施設と連携し、施設の子どもたちをイベントに招待し、楽器を寄贈するなど、体験機会の格差是正につながる社会課題の解決にも尽力する。
「ロッチルを通じて、子どもたちにたくさんのキラキラした大人と関わってほしい。憧れの存在がいることは、好きなことを続ける原動力になる」と精力的に活動する伊吹氏。独立前はIT企業で営業として活躍し、拠点長としてマネジメントも経験。キャリアアップをめざして東京の電子マネーの会社に転職するなど仕事中心の生活を送っていた。
結婚を機に大阪へ戻り、化粧品会社で営業兼企画マーケティングを担当。学生時代から興味のあったIT業界や化粧品業界で頑張ってきたが、産休からの復帰後の忙殺される日々に「働くママにとって社会って厳しい。何のために働いているんだろう」と考えるようになる。
そんな時にIT企業の元上司で起業していた社長から「子どもたちの未来のために」が理念のエンターテインメント事業を行う新会社RFC設立の誘いを受ける。「絶対やりたい!子どもたちの夢を応援する社会にするために働きたい!」と即入社を決めた。
制作会社の協力を得ながら服部緑地野外音楽堂で行った初イベントは、手探りでの開催で、参加者からは好評価だったがチケットが思うように売れず赤字に終わった。翌年は規模を拡大して順調にみえたが他事業の減益が影響し、RFC事業撤退の危機が訪れる。「周りからは辞めておけと言われたけど、子どもたちの未来のために続けたい」と事業承継を決意。2020年1月に独立を決意してこれからという時にコロナ禍が直撃した。
2020年の5月に開催を予定していたイベントは11月に延期し、人数制限を行って実施に漕ぎつけた。「緊急事態宣言の影響で閉塞感に覆われた時期だったし、少しでも楽しい思い出を作ってほしい」と赤字覚悟で実施を決めたところ、開催直前に補助金が採択された。
この頃から「子ども実行委員会」を発足し、子どもによる開会宣言、楽屋の名札、会場ゴミ分別デコレーションなど、子どもたちにも企画運営に参加してもらうようになり、現在の「子どもたちの未来と共に成長する企業」のブランディングにもつながった。
2021年は豊中市と連携し豊中市の公園を使用し、企業ブースの参画も増えた。2022年は規模を拡大して大阪府豊中市、静岡県三島市の2拠点で、2023年4月は東京都多摩市でも開催した。だが、2022年の大阪府豊中市の開催は大雨が降ったこともあり、またも赤字。終了後の振り返りでは、コロナ禍も落ち着き子どもが参加できるイベントが増えてきたこともあり「私たちがやる意味があるのか」と休止を考えた。
しかし、子ども実行委員からの「やりたい」という声に突き動かされ、2023年11月に「ロッチルinひらかたパーク」の開催が決まった。「子どもたちにとって憧れのミュージシャンは“ヒーロー”」をコンセプトに、ヒーローショーの舞台で音楽フェスを行い、園内でストリートパフォーマーのショーや職業体験、メタバース体験など多彩なイベントも行う。遊園地で家族と一緒に、憧れのヒーローとふれあう一日を過ごせるイベントへと進化した。
今後はロッチルをきっかけにさまざまな企業や行政、団体を巻き込み、子どもたちの未来が広がる地方創生や福祉事業を手掛けていくつもりだ。「みんながおもろいことの中に、社会にええこともあればいい」と夢の実現へと向かっていく。
(取材・文/三枝ゆり 写真/福永浩二)