得意のカードやボードゲームで「印刷+α」の価値を創出
創業75年を迎えた昨年、眺望のいい大阪ベイタワーオフィスへ本社移転した大興印刷株式会社。主力事業はパンフレットやカタログなどの印刷製造だが、得意とする「カード」や「ボードゲーム」の技術力とノウハウを活かしたユニークなものづくりでも知られる。
「カード事業の拡大は、子育て世代の社長社員の思いつきがきっかけ。子どものスポーツシーンで選手紹介カードを交換すれば、お互いを尊重するスポーツマンシップが育まれるのでは、というアイデアでした」と説明する田中氏。その後、子どもたちを応援する写真付きトレーディングカードとして、各種スポーツ大会やイベント、大手菓子メーカーに採用されるようになった。
製造管理を受託しているトレーディングカードゲーム 「Force of Will」も欧米やアジアで人気を集め、このことが海外に製造拠点や販売チャネルをもつことにつながった。昨年には10周年を迎え、今夏は4年ぶりに大阪で世界大会を開催した。
また、ボードゲーム好きが集まって立ち上げた事業部では、ボードゲームの企画・製造・サポートを実施。クリエイターとの共同開発や、商品化のためにクラウドファンディングにも挑戦する。「教育や社会課題の解決のために利用されるシリアスゲームが世界的に人気など、カードゲームやボードゲームはアナログながら成長しているマーケットです」。
同社の会社案内をトレーディングカード化した「大興印刷の逆襲」も個性的だ。1箱にA4サイズ16ページ分の会社情報のカードが詰まっている。「まず見せたときに、おもしろい! と言ってもらえますね。カード形式なので情報が簡単に足し引きでき、持ち運びしやすいので社史や学校史にもおすすめ」とアピールする田中氏。
このようなユニークなアイデアが実現するのは、若手社員の意見や新しいチャレンジを応援する社風があるから。「豊かなコミュニケーション活動を通じて相互理解を深め、良心を育み、人類の発展と世界の平和に貢献する」という企業理念のもと、当社の印刷物はすべてコミュニケーションツールだという考えを共有している。
カードやボードゲーム事業を拡大していくと、メーカーとしての役割が大きくなる。つまり、一般消費者に魅力ある製品を届けるために、製造技術や品質管理をさらに磨いて内製化を進めることがこれからの課題だ。「カードやボードゲームの世界では印刷技術のクオリティが高いことが評価され、ブランド力向上にもつながります。商業印刷の習慣にとらわれず、印刷+αの価値創出に全社で取り組んでいきたい」。
(取材・文/花谷知子)
大興印刷株式会社
カスタマーサービスグループ 部長
田中 宏和氏
https://www.daiko-printing.co.jp
事業内容/印刷、トレーディングカード・ボードゲームの製造・企画、Eコマース事業