ITで医療・介護現場の課題解決
近年、医療機関もIT化が進んでおり、医事会計システムや電子メールはすでに普及し、電子カルテシステムなどについても今後普及拡大していくと思われるが、システム専門部署がないなど、運用体制に課題を抱える病院も多く、IT関連業務のアウトソーシングに対するニーズが大きい。そのニーズに応えているのが、株式会社ハイコム(大阪市西区)だ。
同社は、医療機関のネットワーク環境の構築や保守はもちろんのこと、ネットワーク機器を活用した新サービスの提案も行っている。超高齢化社会を迎え、医療機関や介護施設などでは認知症を患う患者や重度の要介護者などが増加し、より安全・安心な環境作りに加え、人材の確保や労働負担の軽減が課題となっている。そこで、同社の医療機関におけるITの知識・ノウハウと、ものづくり企業とのコラボレーションにより、そういった現場の課題を解決するための新たな製品・サービスの開発に向けた取り組みを開始した。
例えば、病院や老人ホームなどでは、夜間に勤務するスタッフが少なく、一度に何人もの患者や入居者の様子を把握するのが困難になる。転倒事故を防止するために、ベッドから起き上がるとアラームが鳴る「離床センサー」などを導入している施設はあるが、アラームが鳴ってから駆けつけても間に合わない、といった事態が起こる。しかし病室に監視カメラを設置するとなると倫理上の問題や設置工事・導入コストなどの問題が発生する。
そこで、無線LAN環境さえあればスイッチを入れるだけで使用可能で、持ち運びも自由にできる「みまもりロボ」を有限会社パーソナルテクノロジーと共同開発し、先日、東京ビッグサイトで開催された「第39回国際福祉機器展 H.C.R.2012」に出展した。「福祉機器展では、看護・介護職の方からさまざまな意見を聞くことができ、ビジネス化に向けた一歩を踏み出せた」と同社代表の岸本充博氏は語る。
今後は、現場の担当者がきちんと使いこなせるように「モノを販売して終わり」ではなく、無線LANや端末機器の設定からメンテナンスまでを行うパッケージ展開を検討している。そして、これまでに培った経験を生かし、ITで現場の課題を解決するさまざまな製品も企画中である。
(大阪産業創造館 新産業推進室 松出晶子)
株式会社ハイコム