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―次の“価値”へ― 眠っている財産×顧客ニーズで過去最高収益を視野に

2026.02.03

前職では、生地を海外に販売する営業を担当し、顧客の要望に応える楽しさを知ったという山元氏。図らずも継承することになった家業では、創業から70年にわたり培われた財産を顧客ニーズと結びつけることで、新境地を切り拓いている。

代表取締役 山元康平氏

1954年に紙箱製造で創業した株式会社山元紙包装社が飛躍のきっかけをつかんだのは、初代が1960年代に開発した三重構造の傘箱だった。圧力をかけても底が抜けない構造で、百貨店に採用され、帽子や背広用の箱も取り扱うようになった。だがバブル崩壊後、コストを見直す動きを強めた百貨店との取引が減少。売上げの9割が失われる危機に直面した。そこで3代目の父親が、紙袋を中心に箱以外のパッケージ製品へと事業転換を図る。また、インターネット黎明期からECサイトの活用に着手したことで顧客が全国に広がり息を吹き返した。

山元氏は28歳で結婚した際に、先代から事業承継の話を持ち掛けられた。当時は海外営業に充実感を覚えていた頃だったが、ほどなくして父親が健康を損ねたことをきっかけに、家業に戻ることを決意する。だが2020年2月の入社とともにコロナ禍に直面、買い物やイベントで使う紙袋の需要は激減した。「今期も赤字なら社長を辞める」と先代に言われ、黒字化を果たせないまま2022年8月に山元氏は社長に就任。「人生、苦難を多く経験した方があとで生きる」と気持ちを切り替えた。

コロナ禍が明け、商品開発に打って出ようと考えた時、70年の間に培われてきた財産のありがたさを感じた。その一つが100社を超える多様な仕入れ先の存在だ。廃棄する野菜皮を使ったアップサイクル紙袋や、箱に使う板紙を使った高級感のある紙袋を商品化。後者では傘箱以来60年ぶりとなる特許も取得した。

もう一つの財産がECサイトだ。開発した製品は、サイトを通じて顧客の反応を確かめることができる。さらに、新たに導入した顧客管理システムを活用することで、サイト訪問者のデータ分析に基づいた広告を出すことができ、効率的な集客を実現しつつある。その成果は、現在の期の業績が過去最高の収益を見込めるほど好調であることにも表れている。

就任当初は気負って感情をそのまま社員にぶつけてしまうこともあったが、まずは意見を聞き時間をおいて返答するように変えていった。社員とその家族に届く会社にしたいとの思いから、給与明細には会社の状況を記したコメントを添えている。待遇面も売上げに連動した報酬制度を構築し、「受け身中心から攻めの営業に転じたい」と意気込む。

最近では、自身が大好きなバスケットボールに関わる新事業のヒントも浮かんできているという。4代目がどのような新事業を生み出し、そこからどのようなシナジーを生み出していくのか。楽しみは尽きない。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

株式会社山元紙包装社

代表取締役

山元 康平氏

https://www.yamagen-net.com

事業内容/紙袋・紙箱の企画・販売、パッケージ印刷