小型、簡単、堅牢で40年以上愛され続ける製麺機

小麦粉、水、かんすいなどの原料をミキサーで混ぜ合わせながらムラなく「練る」。練りあがった生地を2本のロールの間に投入して「延ばす」。そして装着された切刃のサイズの太さに「切る」。この3工程を1台に集約したラーメン製麺機「タイセー」は、1980年に発売して以来40年以上にわたり変わらぬ姿で愛され続けている。

代表取締役 下條 聡哉氏
「コンパクト(小型)で使いやすく(簡単)かつ堅牢。値段も手ごろな点がロングセラーの理由です」と代表の下條氏。小麦粉の種類(強力粉、準強力粉、薄力粉など)や、加水率、かんすいや塩の割合、卵を加えるか否かなどの配合の違い、麺の太さや熟成度合いが食感を左右し、スープの味をも引き立てる。そのため、店ごとのオリジナル麺を開発し、打ちたての新鮮な状態で出すことで、他店との差別化を図ることができる点も製麺機を導入するメリットだ。「自家製麺」を売りにする人気のラーメンチェーンでも、店内に「タイセー」が置かれているのを見ることができる。

「練り」「延ばし」「切り」の3工程が1 台で完結する製麺機「タイセー」。
株式会社大成機械工業は1970年の創業で、もともと千葉県に拠点を置いていたが2023年5月、此花区に本社がある株式会社明和製作所により子会社化された。明和製作所は、ステンレス製品の製造加工を手掛けており、ラーメン用スープを作る業務用圧力鍋の製造も行っている。同社の代表でもある下條氏は「同じラーメン業界向けの製品を扱っていることに加え、自社ブランド製品を持ちたいという思いもあり、大成機械工業を受け入れることにしました」と語る。千葉から大阪に製造拠点を移すにあたって1年以上をかけて技術を承継した。「つぶさに製品を見て、改めて非常によく作りこまれた機械であることに感心しました。一方で1台1台が職人の勘によってつくられていたため、図面に落とし込んで標準化しました」。現在は業務用食品展示会に出展する取引先のブースの一角を借りて製麺機を圧力鍋と同時に展示するなど、相乗効果を活かした販促活動にも力を入れている。

製麺機と圧力鍋。精密な技術が一杯の品質を支える。
実はこの「タイセー」、海外売上比率が7割弱を占める。とくにコロナ禍以降、海外の飲食店からの引き合いが増え、欧米やアジアを中心に売上げが大きく伸長した。ラーメンチェーン店の海外展開や各国でのラーメンブームも追い風となり、同製品は着実にグローバル市場での存在感を高めている。スイスやドイツ、フランスといった欧州諸国でも販売実績があり、EU域内での安全・健康・環境保護に関する統一基準「CEマーク」も取得済みだ。フランスの代理店を通じたEU向けの販売に加え、東南アジアからは直接受注も行っている。「日本のラーメン文化を“製麺”から支え、ラーメンのさらなる国際化に貢献したい」と、海外でもロングセラー化をめざしている。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
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