事業承継

食品添加物の壁を越える、コロッケ社長が無添加に挑戦!

2024.10.15

ファーストインパクトはコロッケのかぶりものだ。合同食品株式会社の代表取締役、和田氏はコロッケ一筋41年の会社を父親から23年前に引き継いだ。自身のことを「もともと静かな人間で、こんなかぶりものをするタイプではない」と言う。「でも、メーカーにとって製品が知られていなければ、それは“ない”ものと同じ。まずは注目してもらわなければ」と、かぶりものを始めた理由を明かす。

和田氏が注目を集めたい製品とは「無添加コロッケ」だ。じゃがいもは無農薬の自然栽培、油は非遺伝子組み換えの国産菜種原料、調味料の塩と醤油も自然な製法でつくったものと、同社のコロッケは材料に「無添加」「自然由来」を貫いている。

定番のじゃがいもコロッケからクリームコロッケ、ミンチカツ、最近ではハンバーグなど味も形も多彩。

父である先代社長のあとを継いだ時、「食品に関わるなら、我が子にも、世の中の子どもたちにも安心して食べてもらえるものをつくりたい」と脱食品添加物の道に乗り出した。しかし、「いばらの道ですよ、いまだに」と苦笑する。

良質な食の生産を志す人たちとの縁があり、材料の調達は順調だったたが、一つめの関門が社内にあった。「新しいことを始めるんですか?」。従業員たちにとって慣れた製造工程の変更は脅威であり、案の定、抵抗されたという。「今なら幹部を集めて意見を聴きながら進めるんですが、当時は私も若かったので、“やるでー!!”と半ば強引に進めたところ、ふと後ろを見たら誰もついてきてなかった……」。そんなことが何度もあったという。

工場では、毎日4~5万個のコロッケを製造している。

二つめは販路の開拓。販売してくれそうな小売店をあたってみたが、ここで和田氏は「無添加が誰にでも響くわけではない」ことを知る。「無添加は身体にいいと根拠を並べてみたところで、興味のない人にはまったく響かない。それは消費者も小売店の担当者も同じ。価格が高いのは厳選した材料を使っているからだと説明すればするほど、“もういいよ”とうんざりされました」。

味への偏見もあった。「無添加食品は味が薄く、美味しくないと思われているんです」。化学調味料を使ったコロッケはひと口目のインパクトが強い。しかも人気食品ゆえにコロッケとはこういう味だという感覚が多くの人に染みついている。一方、同社のコロッケは食べ進むにつれて食材本来の美味しさにたどり着く。「ガツンとした“オイシイ”ではなく、素朴な味わいなんです」。(和田氏は添加物によるおいしさを、本来の美味しさと区別してオイシイと表現している)

「実際、無添加のものを選ぶ人は10人にひとりくらい」。そんな限られたマーケットを求めて、同社はオーガニック系のスーパーや安心安全のクオリティにこだわっている宅配・通販企業をコツコツと開拓している。苦労のかいがあり、販売先は当初の約10倍に広がったが、和田氏は「いや、まだまだです。目標は全国制覇。全国の主要な小売店に当社のコロッケが置かれることをめざしています」と先を見る。

中学校、高校の授業に呼ばれ、現代日本の食について話をしている。

実は和田氏は経営の傍ら、食育活動にも力を入れている。中学校、高校を中心にケミカルクッキングと称した探求授業を行い、化学の授業のような実験と楽しい寸劇を取り入れて、日本の食品添加物の現状とふだん口にしている飲料やお菓子の実態を伝えている。この授業が口コミで広がり、今年は週1回ペース、年間約50回実施。「私たちは食べたものでできている。そのことを子どもたちに知ってほしい」。社会貢献を目的とした活動が、実はしっかりと次世代の購入者を育てているのだ。

コロッケのかぶりものがトレードマークの和田氏。
試食コーナーでは、ものめずらしさに子どもたちが駆け寄ってくるという。

(取材・文/荒木さと子 写真/福永浩二)

合同食品株式会社

代表取締役

和田 友宏氏

https://www.godo-foods.jp

事業内容/無添加コロッケの製造販売