働きがいのある会社に向けて背中を押し続けてくれる相棒
大阪産業創造館プランナー 中尾 碧がお届けする
社長だって一人の人間、しんどい時もあります。そんな時にモチベーションの支えとなり、「一緒に頑張っていこな!」と声をかけたい“人”または“モノ”がきっとあるはずです。当コラムでは社長のそんな“相棒”にクローズアップ。普段はなかなか言葉にできない相棒に対するエピソードや想いをお伺いしました。
【 vol.25 】株式会社キャンドゥ~働きがいのある会社に向けて背中を押し続けてくれる相棒~
株式会社キャンドゥは、数ある市場調査企業の中でも医療従事者へのインタビューによる医薬品市場調査をメインとした全国でも大変珍しい企業である。
代表の荒井氏は大学卒業後にコールセンター業の大手企業に入社しテレマーケティングに携わったが、28歳の時、当時の上司が起業することになり幹部として誘われた。荒井氏は快諾し、1991年から同社でのキャリアをスタートさせた。荒井氏より早い時期から同社の創業をサポートしていたのが、現在の相棒である代田氏だ。代田氏は創業時より長らく市場調査の現場責任者としてスタッフをとりまとめていたが、現在は財務責任者として荒井氏をサポートしている。
設立当時はテレマーケティングと一般消費財の市場調査が主業だったが競合が多く、自社ならではの強みを持つ必要があった。そこで前職で医薬品の治験の症例登録センター業務を担当していた経験を活かして、大手企業が参入しづらい医薬品市場調査を手掛けることにした。ニッチ業界のため参入当初は紆余曲折があったが、医薬品業界への規制緩和が進んで引き合いが増え、1995年には医薬品市場調査に特化した。
受注は好調だったものの、数年後には大手同業者が参入し始めたが、大手と同じ定量調査だけでは価格勝負になり中小企業には不利だ。「ニッチな業界で1位になるためには大手企業がやりづらい仕事をとろう」と荒井氏は腹をくくり、定量調査から、発言や行動など数値以外の情報を聞き取り、分析する定性調査へシフトすることを決断した。定性調査は定量調査より手間がかかる上、インタビュアーの育成にも時間がかかる。それでも生き残りと新たなステージをめざして定性調査をメインに据えた。荒井氏の危機感と決意は代田氏もよくわかっており、会社の変革をメンバーとともに全力でサポートした。
この決断が功を奏し、現在でも他社との差別化をはかりながら医薬品市場調査業界の中で一定の地位を確立している。
しかし2020年、同社もコロナ禍の影響に見舞われた。それまではインタビュアーが病院に足を運び、医療従事者と面談して調査を行っていたが、コロナ禍により病院訪問ができず仕事が止まってしまい、同年10月に社長へ就任した荒井氏はまたしても大きなピンチを迎えた。
そんな時、逆境を救ったのは代田氏の「オンラインで調査をしよう」という鶴の一声だった。代田氏の意見に背中を押されて始めたオンライン調査だったが、想定外に医療従事者からの評判は良く、調査は順調に進み生産性も向上した。
オンライン調査導入とあわせて代田氏が進めたことはスタッフのテレワークだった。荒井氏自身は当初テレワーク推進に慎重だったが、長年女性が多い現場をまとめてきた代田氏には導入への強い思いがあった。それは過去に、家庭との両立が難しく、優秀なスタッフが退職せざるを得なかったことへの反省が起点となっていた。試行錯誤で始めたテレワークだが今では定着し、最初は慎重派だった荒井氏も今ではとても前向きだ。
調査の幅や、テレワークなど働き方の多様性が広がったことで働きやすい会社になったが、次は働きがいがある会社へシフトしていきたいと荒井氏、代田氏は語る。
創業から今まで幾度も逆境を切り抜けてきた。打ち克ってこられたのは、常に世の中の流れに先手を打とうと考え抜き動いてきたことと、それを実現する柔軟性があったからこそ。経営者と従業員が同じ目線で動ける会社であるために、これからも力を合わせて切り開いていく。
(取材・文/大阪産業創造館マネジメント支援チーム プランナー 中尾 碧)