手のひらサイズのロボットで社会課題を解決へ
愛らしい動きで、入退館チェックや受付、決済などを行なうロボット『PLEN Cube』。便利な半面、心情的に無機質に感じてしまうことも多い顔認証システムだが、PLEN Cubeはユーモラスなシーンへと変えてくれる。
「モーションについては、独特の間などを徹底して研究。社内の技術者たちと泥臭く追求しました」と、開発秘話を話してくれたのは、CEOの赤澤氏。既に専門学校などで導入が進んでおり、テレビ番組の中で“ロボットが出欠を自動化!”として取り上げられるなど、耳目を集めている。
しかし、認証は同社にとって通過点にしか過ぎない。めざすは経営課題の解決といったDX化が本丸。詳細は企業秘密だが、画像で得たデータをフルに活かすことで、ホスピタリティとDXの両立をめざす。また、コロナ禍の今においては、非接触で検温や自動問診による健康チェックも行える優れモノだ。
PLEN Cubeの前には、量産化二足歩行ロボットの開発も手掛けるなど、ロボットへの知見が深い赤澤氏。ずっと研究畑かと思いきや、「実は文系出身だったんですよ」と笑顔で明かす。
ロボット開発の魅力に引き込まれたきっかけのひとつは、鉄工所を経営していた父親の存在。ロボカップ世界大会で2004年~2007年まで4連覇を達成するという快挙を成し遂げた、産学共同の“チーム大阪”。メンバーは石黒浩氏、大和信夫氏、高橋智隆氏というロボット開発の第一人者たち。そのドリームチームの総監督を務めたのが、父親の赤澤洋平氏だったのだ。
「当時私は別の仕事をしていたのですが、ロボットづくりって面白そうだな、と感じて」。そこで父親の会社に移り、社内ベンチャーとして研究をスタート。「PLEN Cubeの原点です。2009年に父の会社は事業を終えましたが、ものづくりの志を引き継いでいると思っています」。
現在、開発には外国人も多数加わり、英語が飛び交う社内環境だ。同社の評判が高度なスキルを持つ学生たちに口コミで広まり、インターンとして来日後、社員になるケースが多いという。
競合は監視カメラや人型ロボット。しかし、ユニークな動きとコスト面で圧倒的な優位性を誇り、独自路線をひた走る。
「ミッションは社会的課題の解決。少子高齢化で労働人口が減少する日本、特に地方を我々の技術で支えたい。例えば田舎の接骨院の受付をPLEN Cubeが担当し、熟練の先生が施術のみに専念しているような絵姿って、微笑ましいじゃないですか」と、赤澤氏は目を輝かせる。
実務的でワクワクを届けてくれるPLEN Cubeは、人とロボットを繋ぐ、未来への架け橋になりそうだ。
【 2025年 自社はこうなる 】
人と『PLEN Cube』が当たり前に共存する文化の創造を、お手頃価格で実現する。
(取材・文/仲西俊光)