「裏表」「前後」のない心地いい肌着を泉州から世界へ
HONESTIESの肌着には「裏表」「前後」がない。だから、毎日の脱ぎ着や洗濯物をたたむ際の手間とストレスを軽減し、シンプルで豊かな時間を生み出してくれる。
このアイデアは、西出氏が1日に何度も着替える男の子2人の子育てのなかから生まれた。自身も「脱いだものをそのままにしないで」と常に注意されるタイプ。
「裏返しでもOKな肌着はないのか」と思って調べてみると、国内にも海外にも事例がない。「泉州の繊維産業が生かせるビジネスになるかも」とひらめいて、企画書作成にとりかかった。
東京の大学を卒業した西出氏は、IT企業で企画職を経験したのち、父の勧めで泉佐野に帰郷。ほどなくして地場産業であるワイヤーロープ製造の家業が、取引先の海外シフトで経営が悪化。
そこで、生き残りをかけた西出氏は事業承継し、泉州野菜を使ったピクルスの製造・販売で業態転換をはかった。
現在、「いずみピクルス」としてなんばパークスなどに出店している。
ピクルスのつぎは肌着。
「新しいアイデアでみんなの笑顔をつくり、地域社会に貢献する」という経営理念にブレはないが、アパレルに関しては素人のため、家族にも言い出せずにいたという。
そんな西出氏の背中を押してくれたのは、泉佐野市が起業家支援のために行ったビジネスアイデア募集。無事に採択されて補助金を得ることができた。
温めていたアイデアを実行するため、まずは協力してもらえる地元の繊維関連企業を探した。
「裏表」のない肌着にするには縫い目がフラットになる特殊なミシンが必要で、それを使える職人もみつけなければならない。
さらには、綿100%で柔らかな肌触りと抗菌防臭機能にもこだわり、違和感なくフィットする着心地については妥協せずに試行錯誤を繰り返した。
商品化され、2020年グッドデザイン賞を受賞したHONESTIESの肌着は、忙しい現代人や子育て世帯だけでなく、医療や介護の現場での活躍も期待されている。
「視覚や精神にハンディキャップをもつ方々からの要望も高く、ユニバーサルデザインの具現化を通して社会貢献ができる事業だと思っています」。現在は、「裏表」どちらで着てもボタンがはめられる介護用の前開きシャツを開発中だ。
今後は、「裏表」のない靴下やパンツなどインナーウェアを充実させ、ルームウェアにも着手する予定。よりリーズナブルな商品が届けられるように、製造ラインの展開なども考えている。
「日常の不便を解決することで、みんなが笑顔になるようなよりよい商品を泉州から世界へ発信したい」という西出氏のチャレンジは続く。
(取材・文/花谷知子 写真/福永浩二)
https://www.osaka-toprunner.jp/
◎HONESTIESの詳しいページは↓コチラ↓
https://www.osaka-toprunner.jp/project/introduce/honesties/