開発・提案型商社という新カテゴリーで次代の量産を支えるねじのエバンジェリストたち
2020年に設立70周年を迎える池田金属工業株式会社は、ねじ一筋に歩んできた。
スマートフォンやロボットなど精密機械に使われるシャープペンシルの芯ぐらいの細さのものから、発電所の発電機などに使われる電柱並みの太さのものまで、扱うねじの種類は数十万にのぼるという。
文字通り、戦後の経済成長の見えない部分をガッチリと「締結」してきたねじ業界だが、同社は異彩を放つ戦略で着実に前進してきた。その武器の一つがPCトルクアナライザーによるトルク解析サービスだ。
ねじはきつく締めれば良いというものではなく、金属やセラミックなど締結する相手の素材やねじ自体の強度、使用ドライバーなどにより適正なトルク(回転力)が定められる。
PCトルクアナライザーを使えば、手動のトルクレンチでは再現できない、現場と同じ条件下の回転数で適正トルクを計測できるとあって、安全・確実な量産体制の実現を求める多くの企業の関心を集めている。
「お客さんから言われた物を提供してきた業界なんですが、うちの強みはユーザーの困りごとを解決する提案ができること」と話すのは商品開発部の課長、砂邊氏。
ねじ業界の枠組みからの脱皮と飛躍をリードするのが商品開発部なら、その成果と知見を直接ユーザーに拡散するのが石戸氏率いる直需グループだ。
若手中心のメンバーで各種展示会への出展をはじめ、メーカーの設計・技術関係者向けに「ねじの基礎講座」「トルクアナライザーを用いたねじのトルク曲線解析セミナー」「ねじのゆるみセミナー」といった啓発活動も積極的におこなっている。
もともとねじ業界に高いモチベーションを抱いて入社してくる若者は少ないという。しかし、ねじの奥深さと産業における価値を知るにつけ、彼らはほどなくねじのエバンジェリスト(伝道者)として育ち、先述の講座や展示会の主役として活躍する。
社員自ら「イケキン」と親しみを込めて呼ぶ同社の最大の強みは、話のわかる上司と若者たちとの締結から生まれるヒューマンなトルクパワーにあると見た。
(取材・文/山蔭ヒラク)
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池田金属工業株式会社
営業3部部長 直需グループリーダー 石戸 達也氏
商品開発部課長 商品開発チームリーダー 砂邊 康之氏
事業内容/工業用ファスナーなど金属部品の開発・製造・販売