Vol.14 USJを核に商業系施設の建築が最も活発な「此花区」
本シリーズのVol.5で「倉庫など運輸業用建物の建築が極めて活発な住之江区」を紹介しましたが、同じくベイエリアに位置する此花区は住之江区とはかなり様相が異なる展開を見せています。
数年おきに実施している大阪市の「土地利用現況調査」から具体的な変化を見てみましょう。
同調査は、2000年度調査以降、最新の17年度まで5回実施されています。このデータのうち、(道路や河川・水面などの非建物用途を除いた)建物用途の面積に着目し、その詳細用途別データを分析しました。
まず、総建物用途面積の17年間の変化に着目すると、上述のVol.5で示した住之江区が255haの増加で24区の中でトップに位置し、次いで、此花区が223ha増となっています。
全市の増分に占める両区の寄与は54%に達し、いかに多くの建物が両区に新規に建築されたかがわかります。ちなみに、北区は30ha増、中央区は僅か7ha増に過ぎません。
用途を詳細に見ると(図1)、住之江区の運輸通信施設の増分は201haで区の増分の79%を占めており、一方、商業施設の増分は17haで6.6%に過ぎません。
他方、此花区を見ると、同じく運輸通信施設の増分が112haで区の増分の50%を占めますが、次ぐ商業施設は78ha増で35%の寄与となっています。
北区や中央区の商業施設の増分は各々20ha未満に過ぎないなか、此花区の78haは突出しています。実は、商業の内訳にUSJ分が該当する遊興・娯楽・サービス施設が入っており、その拡張分46haが大きく寄与しています。
しかし、それ以外の増分は32haに達し、北区をも上回っています。内訳を見ると、宿泊施設が14ha増、業務が10ha増、販売商業が8ha増となっています。
最も貢献している宿泊施設の増加は明らかにUSJに起因するものであり、販売商業も観光客をターゲットにしていると考えられます。
こうした現状から、年間1,500万人を超える入場者数を誇るUSJの波及効果が、BtoC系を中心に多様な用途の建物新築に及んでいるかがわかります。
上に述べた此花区の運輸通信施設ですが、2013年度から17年度にかけて急増していることが図1から判読できます。この殆どは埋立中の夢洲の東地区コンテナターミナルゾーンでの建設と考えられます。
また、2025年の開催が決定した大阪・関西万博の会場が舞洲であることに加え、統合型リゾートを核とした国際的エンターテイメント拠点を夢洲で形成する構想が推進されています。
これらが前進すれば、USJと同様な波及効果が此花区にもたらされることは確実と考えられ、今後とも此花区が大阪市の建設市場を牽引していくことが期待されます。
また、現状での此花区内の新築住宅着工戸数は300~600戸と低調な水準に留まっていますが、2025年に向けて、JRゆめ咲線の延伸など、鉄道アクセスも充実させる構想であることから、それに伴って、次第に住宅着工が増加することは必至であり、加えて、住関連機能の拠点整備も進展することは確実です。
このように、此花区の展開から目を離せない状況が当分続くことでしょう。
(取材・文/大阪産業創造館 徳田裕平)