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若年層を開拓 新製法でつくるふっくらおかき

2013.09.10

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昔ながらの正統派のおかきは歯ごたえがあり、米の香りが口の中でふわりと広がる。大正9年に珍味問屋として創業し、昭和30年代におかきの製造を始めたふじやの「法善寺あられ」もそんな逸品だ。大阪ミナミの法善寺横丁の一角に店を出したのがおかき製造の始まりで、以来、代々受け継がれてきた製法を守ってきた。

製法だけでなく原料にもこだわる。「滋賀県の特定農家と契約を結び、減農薬栽培による安全性の高い良質のもち米を使っています。原料は日本一やと自負しています」と専務の園田氏は胸を張る。

こうして手間暇かけて製造したおかきはいまや大阪名物であり、ギフトとしても重宝されている。ところが一方ではスナック菓子の普及と共に、おかきの若者離れが進行。歯ごたえのあるおかきは敬遠され、売上げは下降傾向に。

「これではいかん」。。そんな危機感をバネに、若者に受け入れられるおかきを探求した結果、素材を内側からも焼き上げる「マイクロウェーブ加熱」という新しい製法にたどり着いた。「大阪ではうちだけ。投資額は2億5千万円。チャレンジでしたが、社運を賭けて導入しました」と振り返る。

昔ながらの〝かたい〟おかきは、焙煎工程で外から焼き上げる。これに対してマイクロウェーブ加熱は電子レンジの要領で、中からも焼く。これにより、ふっくらサクサクの新食感に焼き上がるのだ。

しかし、商品開発は苦戦した。設備はコンピュータ制御できるものの、温度湿度の微妙な変化に応じて職人技の調整が求められる。さらにマイクロウェーブ加熱を行うためには蒸した米をつぶす必要があり、風味が若干飛んでしまう。これらの調整に1年という時間と約1tの米を費やした。
「現場から早く商品化しようと言われましたよ。でも自分で納得するまで絶対に出さへんって決めてましてん」と園田氏。そんな粘り腰の末、マイクロウェーブ加熱を使った新商品「ふくらまる」が完成したのだ。

納得のいく商品はできたものの、おかきを食べない若い世代に売らなければならない。そこで2店ある直営店での試食に力を入れるなど、「地道に販売活動をしていった」。まだ発売して1年だが、若い人の反応も上々で売上げは上昇傾向だ。
「ふくらまるを食べた若い方の中には今までの固いおかきを購入してくれる人もいれば、なじみ客がふくらまるに興味を持ってくれたり、相乗効果が出ていますよ」。今後はふくらまるのシリーズ展開で、新しい客層の開拓に力を入れる考えだ。

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▲マイクロウェーブ加熱ができる装置は全国でも数社しか導入されていない。

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▲契約農家の田んぼには、「大阪法善寺あられの契約栽培」の看板が。

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▲ついた米を蒸しておかきにするという昔ながらの製法にこだわる。

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▲専務取締役 園田 次郎氏

株式会社ふじや(法善寺あられ)

専務取締役

園田 次郎氏

http://www.houzenji-arare.co.jp/

設立/1953年 資本金/4,000万円 従業員数/95名 事業内容/大正9年創業の老舗。おかきや珍味などの製造販売を営む。自社ブランドを確立する一方、これまで培ったおかきづくりのノウハウを活かしたOEM製造も展開。商品企画からパッケージデザイン、売り場開発なども行う。