歩行支援ロボットという新しい市場を作る
RT.ワークスは、テレビやブルーレイディスクレコーダーなどの「FUNAI」ブランドで知られる船井電機から生まれたスピンアウトベンチャーだ。
黒モノ家電メーカーがなぜ生活支援ロボットを手がけたのか。
「かつてビデオデッキを生産していた時に培ったセンサ、モーター制御技術をこれから広がる高齢化市場で役立てようとした時に、健康長寿に寄与できる生活支援ロボットがつくれないだろうかと考えたのがきっかけです」と鹿山氏。
2015年、体に装着しない歩行支援ロボットとしては世界初となる「RT.1」を市場に送り出した。最大の特長は、道の傾きや歩いている速度などを感知し、歩きやすいように制御することだ。上り坂にさしかかると推進力(アシスト)が加わり、下り坂になるとブレーキがかかる。
問題はその加減だ。「100台の試作機を病院や施設の高齢者に使ってもらい、そこで集めた声を反映させることで自然な歩行がしやすいようなアシスト・減速の制御の仕方を考えた」という。ただ、20万円を超える価格が普及のネックとなった。
そこで介護保険を活用しレンタルで利用できるように考え、16年に製品化したのが2号機の「RT.2」。「RT.1」では、位置や活動量を家族が把握できるようにするための通信機能をつけていたがこれを外し、歩行支援機能に特化。
安定性を確保するために体を囲い込むような構造に変えた。この結果、月々700~800円の負担で使えるようになり、他社へのOEM供給分を含め、介護市場では5000台を販売している。
今新たに挑んでいるのが、介護が必要でない人の健康維持を目的とした電動キャリーの商品化だ。「重いものを楽に運べるようにし、外に出歩く楽しみを増やしたい」との思いが込められている。
部品については「RT.2」と共有化しコストを抑える一方で、10kgの荷物を運べるよう推進力を強くしながら、ブレーキの力は軽くしている。「高齢者が使う歩行器のイメージからの脱却を図るため、いかにデザインを洗練させていくかが今後の開発のポイント」と語る。
買い物で使いやすくするようスーパーと連携したり、月々のレンタルで利用できる料金方式を採り入れるなど、売り方についても工夫を加えていく。
「会社の一事業では成功できない」とスピンアウトを勧め、自ら創業資金も提供した船井電機の創業者、船井哲良氏は2017年に亡くなった。
“1人立ち”には不安もよぎったが「ベストよりまずベターをめざし、スピードを意識するようになったことでここまで来られた」と鹿山氏。「健康で長生き」を後押しするための新しい市場を創出する旅はまだ始まったばかりだ。
(取材・文/山口裕史)
http://www.osaka-toprunner.jp/
◎RT.ワークスの詳しいページは↓コチラ↓
http://www.osaka-toprunner.jp/project/introduce/rtworks/
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