高付加価値品に絞って展開 「高くても勝負できる」
2013年、タイに現地法人設立
薄い素材を型通りに打ち抜く金属刃を製造している。刃物はベースとなる木の土台に埋め込まれて木型となり、菓子箱やスマホの表面保護フィルムのほか自動車、電子部品の抜き型としても使われる。刃物を製造する機械も自社で製作しており、とくに精度が求められる高付加価値品で強みを発揮している。
「特殊製品ということもあり、売上げが景気に左右されにくく安定していた。それだけに会社はどっぷりぬるま湯体質に浸かっていた」と中山氏。だが、リーマンショックが安眠を破った。「その前に値上げに踏み切っていたこともありダブルパンチで注文が減った」。得意先は量産品の生産拠点をアジアに移す動きをさらに進めていた。
それまでも少量ながら輸出はしていた。だが、すべて日本の商社を通し、現地の代理店を経てユーザーに届く流れとなっていたために「こちらの提案が伝えられないもどかしさを感じていた」。
そんな時、国内で競い合っている同業メーカーがタイに工場を出すとの情報を聞きつけた。先んじられるわけにはいかない。2012年6月、タイの展示会に出て手ごたえを感じていた同社は、法人の設立手続きを急いだ。合弁先をどうするか。本社からだれを現地駐在員として行かせるか…。初めてのことだけに不安ばかりだったが、コンサルタントの力を借りながらわずか半年で設立にこぎつけた。
現地では製造せず、大阪の工場で製造した刃物を輸出、タイで在庫したのち販売する。ナカヤマの中でも高付加価値品にあえて絞って販売する戦略だ。価格は中国企業が造った製品のはるか上を行くが、1000種類もの刃物の中から最適なものを選び、自社の機械で製造しているこだわりを伝える。ユーザーから「他社製品より10倍高いが、20倍長持ちする」と喜びの連絡が入った。「得意先の仕事の中で、すべてうちの刃物を使ってもらおうとは思っていない。品質が求められる10%分だけ使ってもらえればいい。それが各企業に広がれば相当な量になる」。
口コミで徐々にナカヤマの名前が広がりつつある。東南アジアの中心に位置しているため、近隣諸国への再輸出も増え始めた。マレーシアやバングラデシュのほか、最近は中東からの注文も入る。「高くても勝負できることが社員にとってのさらなる自信になり、ぬるま湯だった会社に活気が生まれている」。
現在、売上げのうち輸出が占める割合は3割にまで増えつつある。「できるだけ多くの社員に現地の空気を感じてもらいたい」と出張時には多くの社員をかわるがわる同行させるつもりだ。2年目となる来期の黒字化も視野に入りつつある。
▲トムソン刃と呼ばれる紙やフィルムなどを打ち抜く刃物を製造している。
▲バンコク市内に構えた事務所。従業員は、日本人社員1人と現地採用者2人とドライバーの4人。
※中山 真貴さんのロングインタビューはこちら
https://bplatz.sansokan.jp/archives/985
株式会社ナカヤマ
取締役統括本部長
中山 真貴氏
設立/1956年 資本金/2,400万円 従業員数/55名 事業内容/トムソン用打抜刃の製造販売及び関連付属品の販売。打ち抜く対象は、液晶テレビ用の偏光フィルムから菓子箱まで幅広い。