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「出るなら今だ」 同業者と協力してベトナムに生産拠点を設立

2013.08.09

2012年11月、ベトナムに現地法人設立

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「海外に進出するならベトナムと決めていた」と早水鉄工所の曽我部氏は言う。船舶用エンジン部品を製造する同社は取引先からのコストダウン要求が強まり、「中国との価格競争に勝てないと仕事を回せなくなる」と釘を刺された。9年前からベトナム人研修生を受け入れ、彼らの真面目な働きぶりを熟知していた同氏は、コスト削減をめざした生産拠点の候補地として迷わずベトナムを挙げた。

しかし従業員10数名の町工場が海外に進出するのはハードルが高い。その決断を後押ししたのは、長く付き合いのある同業者の存在だ。一足先にその同業者がベトナム進出を決め、「どうする?」と問われた。「出るなら今だ。この機を逃すと独自で進出準備を進めないといけない。一緒にベトナムに行こう」と意を決し、2社合同で設立準備を行うことになる。

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ベトナム進出を決断したのが2012年2月。以降、毎月現地に飛び、工業団地の選定から設立登記の準備まで奔走した。約15の工業団地を視察し、最終的に進出を決めたのは、ホーチミンから車で約1時間のLong Thanh工業団地。2012年11月に現地法人「HAYAMIZU VIETNAM Co.,Ltd.」を設立し、新たなスタートを切った。

「2社合同で進出したのはメリットが大きい」と強調する。互いに協力しながら進出準備ができた点に加え、「何より心強い」からだ。工業団地内では隣同士で工場を設け、フォークリフトを共用するなど投資リスクを分散する。「さらに同業の社長さんから進出コーディネーターを紹介してもらい、設立準備で大変お世話になった」と感謝する。

人材が限られた中小企業は、「誰を現地に送り出すか」で苦慮するケースも多い。「その点、技術者の戸村が手をあげてくれたので本当に助かりました」と同氏。現在、戸村氏が現地法人社長として工場運営にあたる。とはいえ、現場は熟知していても経営は素人。「だからトップの私が毎月ベトナムに飛び、経営面でのサポートを続けています」と模索は続く。

今年3月に工場を本格稼働させて以降、現状では日本から材料を送って現地で製造し、日本で最終仕上げをしたのち取引先に納品する。コストメリットはあるものの、輸送費がかさむことから材料の現地調達も検討中だ。

一方、営業展開では希望の光が差し込んでいる。ベトナムに拠点を置く日系企業から新たな仕事が舞い込んだり、日本では難しい日系大手との直取引も実現しそうだ。コスト削減を目的に設けた生産拠点が、新たな販路開拓のチャンスを呼び込みつつある。

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▲現地法人社長の戸村氏とはスカイプで頻繁にやり取りする。日本語が話せるベトナム人は現地で2名採用。

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▲(左)日本の工場で磨き処理を行うベトナム人研修生。真面目で仕事の能力も高い。(右)現地採用のベトナム人は将来の幹部候補。

▲日越合同で慰安旅行に。国境を越えても心の交流は大切だ。
▲日越合同で慰安旅行に。国境を越えても心の交流は大切だ。

株式会社早水鉄工所

代表取締役

曽我部 実氏

http://hayamizu-tekko.com/

設立/1982年 資本金/1,000万円 従業員数/15名 事業内容/船舶用エンジン部品などを製造する。2012年にベトナムに現地法人を設立。グローバルネットワークを活かした『金属加工技術屋集団』として、NC旋盤やマシニングセンターを駆使した高品質、高付加価値な加工技術を誇る。