社内の壁をなくして生まれたのは「責任ある自由」
商品企画から営業、研究部門までが“同居”する広々としたフロアには一切の仕切りがなく、社長室も商談室もない。やりとりはすべてガラス張りだ。取材に訪れた時、中央の島に紛れ込むように仕事をしていた社長の山添氏がすっと立ち上がると、100人ほどの社員が後に続き、一斉に「いらっしゃいませ」と元気良く挨拶する。
会社の数字はすべて開示され、会社へ物申す「意見箱」に投函された手紙は事前のチェックなくそのまま役員会で公開されるなど、「開かれた会社」を貫く理由を「実利的だから」と山添氏は説明する。
主力事業は化粧品のOEM生産。研究部門はじっくり時間とお金をかけて商品づくりをしたいが、かたや営業はできるだけ早く安く顧客に商品を届けたい。「ほうっておけばその部門だけに都合のよいルールがつくられ、お客様のためという視点が忘れられがち。社内に密室をつくらないことがその抑止力になる」。
さらに「失敗は本人が真っ先に報告する」という社内ルールが徹底されている。オープンで自由なことは決してきれいごとではなく「責任が伴う自由」なのだ。
そうした社風から生まれる企画提案力こそ同社の強み。自由な意見交換の中から年間4000件の試作が生まれ、専門知識が必要な際は企画や研究など各部門がクライアントに同行し、助け合う風土が根付いている。
山添氏が18年前に入社した当時から売上は7倍近くに増え、国内外合わせた社員数は500人を超えた。昨年7月にオーナーの社長からバトンを引き継いだタイミングで、経営理念も顧客に新しい価値を創造することを旨とした内容に一新した。
併せて会社の更なる成長に向け60に及ぶプロジェクトを立ち上げた。リーダーは部署を超えてメンバーを人選できるようにし、「有機的な組織づくり」に向けた工夫を忘れない。
「試作チケット制の運用」もそのひとつ。営業から研究に対し、これまで自由に行われていた試作依頼を、各営業チームに割り当てるチケット制を導入。試作を依頼できる権利を有限にすることで、プロセスを可視化し、結果責任を明確にできる。
「どれだけ組織が大きくなっても、社内でのコミュニケーションが停滞してはいけない」と山添氏。すべては昨年の社長就任時に約束した「社員の生活の基盤を守る」「エキサイティングな会社」であり続けるためだ。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
株式会社コスモビューティー
代表取締役社長
山添 隆氏
事業内容/化粧品、洗剤、消臭剤、医薬品などのOEM製造。ベトナム工場のほか今期は中国工場も稼動し、中国市場向けも強化する。