商品開発/新事業

ブラシ×ゴルフ=ゴルフプレー中の日焼け止め、オーエヌ関西ブラシが手掛ける「VIVOLUCE β」とは

2024.03.11

1950年の創業以来、工業用ブラシのメーカー卸ひと筋に歩んできた株式会社オーエヌ関西ブラシが初の自社ブランド商品の開発に挑んだのは創業70周年を目前にした2018年のこと。「ユーザーからの依頼を受けてオーダーメイドで商品を開発する仕事はやりがいがあるのですが、自分たちで開発したものを世に問うてみたかった」と大野氏。

商品化したのは二つ。ゴルフボール専用の泥落としブラシと高級化粧筆だ。前者については自身の趣味であるゴルフからヒントを得た。ブラシは球形のゴルフボールの形状に合わせてカーブをつくり、引っ張れば伸びるストラップをつけパンツに装着できるようにした。「アイアンのフェイスの汚れを落とすのにも使えると好評です」。

ゴルフボール専用の泥落としブラシ「Q-MA球磨」

さらにゴルフ×化粧筆から、「プレー中に日焼け止めをブラシで塗ることができないか」との発想に至った。「よく使っていた液状の日焼け止めはベタベタして、つけるたびに手を洗いたいのですがプレー中はそうもいきません。パウダーにしてブラシを使って塗れるようにすれば手を汚さず、スピーディに塗ることができるのではと考えました」。

ブラシを使ってすばやく塗れる日焼け止め「VIVOLUCE β(ヴィヴォルチェ ベータ)」

化粧品会社に勤める知人を頼って、UVカット力の高い日焼け止めをファンデーションタイプにして開発してもらい、肌の色に自然に馴染むようブラウン、ベージュなどをそろえた。また、ブラシについては専用の植毛機がないため、大阪府知事指定伝統工芸品に登録された「なにわ刷毛」の職人のうち「なにわの名工」としても表彰された職人に依頼。容器はファンデーションとブラシを一体で収納できるようにし、持ち運べるように工夫した。

2023年6月にクラウドファンディングを実施したところ目標額を達成。「市場で受け入れられるか半信半疑でしたが、目標達成で後押ししてもらいました」。現在は自社のECサイトを中心に販売しているが、今後はゴルフショップや練習場に販路を開拓していくという。また、展示会で知り合った商社を通してシンガポールの富裕層向けにも販売している。

洗う、掃く、取り除く、磨く……。ブラシが持つさまざまな機能にとって代わろうとする商品は次々に開発されるが、結局はブラシに戻っていくという。「細かいすき間まで入り込めるのはブラシだけ。当社もすき間の発想でブラシ、刷毛ならではの特性を生かした自社商品の開発を進めていきたい」と次のアイデアを温めている。

代表取締役 大野 順也氏

(取材・文/山口裕史)

株式会社オーエヌ関西ブラシ

代表取締役

大野 順也氏

https://onkansai-brush.com

事業内容/工業用ブラシ、市販用ブラシの開発・販売