ものづくり

株式会社旭東の新たな挑戦とは。父の思いを受け継ぎ、空気除菌・脱臭器「グリーンメイト」を世界へ

2023.09.20

決して名の知れたブランドではないが、株式会社旭東(KYOKUTO)の空気除菌脱臭器「Green Mate(グリーンメイト)」の導入実績は錚々たるものだ。大阪の大手タクシー会社の全車両で設置されているほか、2021年に開かれた東京オリンピック・パラリンピックの選手村で走行した自動運転EVにも採用された。いずれも導入先が、多数の商品を実際に比較しその効果を検証したうえで買いたいと声がかかった。市場には無数の除菌・脱臭装置が出回っているが、同社では10年前、公的機関に除菌・脱臭効果や安全性について評価を依頼し、科学的データに基づいたエビデンスを公開し、競合製品と一線を画してきた。

1968年、安藤氏の父が創業。大手家電メーカーの下請けとしてさまざまな要請に応えてきた結果、金型の設計や製作、プレス加工から組み立てまでを一貫して担い、金属だけでなく樹脂成形にも対応するオールラウンドプレーヤーとして地歩を固めてきた。「自社のオリジナル製品を持ちたい」という強い思いから、先代は2001年に塩を主原料にした無農薬除草“材”「草枯れちゃん®︎」を、そして2006年には空気除菌脱臭器「グリーンメイト」を市場に送り出した。

安藤氏が入社したのはその頃だ。「3人の子育てがひと段落し、働きに出たいと思っていました。父の会社なら子どものことで何かあっても融通がきくと思い、入社しました」。当初はパートでグリーンメイトの組み立て作業を担当していたが、数年後には製造部門を任されるまでになった。

80歳を目前に先代はいくつかの事業承継の選択肢を考えていたが、経営手腕が未知数であることに加え、「苦労をかけたくない」という思いもあり安藤氏への後継指名をためらっていた。最終的には「父が築いてきた事業を守り、育てたい」という安藤氏の思いが勝った。2021年7月の社長就任とともに「社員が誇りを持てるように」と工場の改装、整理整頓を進めるとともに、残業の削減、女性の登用にも取り組んだ。併せて、グリーンメイトのデザインを磨き上げ「スタイルシリーズ」としてリニューアルした。その出来上がりを見た父は安藤氏には面と向かっては言わなかったものの、孫娘(安藤氏の次女)に「(社長を)任せてよかった」とうれしそうに語ったという。

今年7月には従来の紫外線、オゾンに光触媒機能を付加し、一段とパワーアップし、USB充電も可能なグリーンメイトの新商品も送り出した。また、単身インドにグリーンメイトの市場調査にも出かけた。社長に就任して2年。「つらいと思ったことは一度もない。楽しいことばかり」といきいきした表情で語る安藤氏。次のオリジナル商品のアイデアもしっかり温めている。

代表取締役 安藤 光代氏

(取材・文/山口裕史)

株式会社旭東

代表取締役 安藤 光代氏
営業部 営業部長 原 信行氏

https://kyokutou.jp

事業内容/金型製作、金属・樹脂の加工