アウトドア用品に遊び心を
キャンパーたちにDODの名を一躍知らしめたのが2016年に市場に送り出した「カマボコテント」だ。よくある三角屋根のテント形状とは異なるトンネル形状で、テント内でかがむことなく移動ができ、リビング、寝室スペースを広々と取れる居住性の高さが特長だ。もともと1週間単位で遠方にキャンプに出かけることの多い欧米で浸透していたものをDODが1泊2日キャンプの多い日本人向けに小型、軽量かつ簡便で組立てやすいようにアレンジした。キャンパーの心をつかみ、これまでにリニューアルを2回重ねたロングセラーだ。
「アウトドアは決してハードルの高いものではなく気軽にできる外遊びなんだよということを伝えたい」との思いでブランドが立ち上がったのは2008年のこと。企画開発メンバーが商品化で常に心がけるのが「自分たちが欲しいと思うものをかたちにすること」と辻氏は言う。キャンプ道具運搬・収納に使うボックス「ヨクミルヤーツ」、そこに背もたれを付けチェアにも使えるようにした「スワレルヤーツ」。固形燃料を収め、その上に6本の腕を伸ばし器を載せる構造になった五徳には「アシュラノゴトク」の名が付く。「覚えやすいように、愛着を感じてもらえるように」とネーミングにも妥協しない。
企画開発を担当したブランドリーダーに辻氏が思わず「ホンマにこれ売るんですか」と目をむいた商品が今年の第一弾商品「シュリケンブラスター」だ。焚き火に使う火吹き棒になぜか手裏剣が付いている。しかも使うごとに黒光りする真鍮製だ。リーダー曰く「キャンプはロマン。その中でも焚き火はロマン。男ならだれでも小さい頃憧れた手裏剣をそこに付ければこれぞロマンの中のロマン」。酔い知れるように語る姿に辻氏はブランドコンセプトである「Stay Crazy」の真髄を見たという。
実店舗を持たないことでコストを価格に還元しているが、人目に触れない分、HPやSNS、YouTubeでの発信には尋常ならざるパワーを注ぐ。Twitterのキャンペーンでも「アカウントを登録した人の中から抽選で」などという野暮なことはしない。直近のバレンタインのプレゼントキャンペーンでも「#DODさん告白します」で面白話を募り大きな反響を呼んだ。今やInstagramは36万人、Twitterは11万人のフォロワーが付く。「何よりまず自分たちが面白がること。そうすればお客さんも面白がってくれると思うんです」。アウトドア用品界の異端児がこれからどんな商品を送り出してくれるのか楽しみは尽きない。
(取材・文/山口裕史)