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―次の“品質”へ― 創業113年の老舗メーカー 品質を受け継ぐ4代目社長の覚悟

2026.02.05

創業113年。アサヒ産業株式会社は、生地の卸問屋から始まり、ユニフォームの製造・販売で実績を積み重ねてきた老舗企業である。なかでも動きやすさを追求し、腰部分にプリーツ(じゃばら)をつけたツナギ服は、整備工場や建設現場など幅広い業界で使われている。

同社の4代目を務める代表取締役の山上氏は、「私は次男ですが、高校生の頃からなんとなく自分が会社を継ぐのだろうと思っていました」と話す。繊維関係の別会社での勤務を経て、5年前に入社し、「営業、DX、人材採用、経営理念やビジョンの構築まで、できることはなんでも取り組んできました」と振り返る。

代表取締役 山上翔平氏

現会長である父からの事業承継は比較的スムーズに進んだが、それでも世代間の価値観の違いに戸惑う場面はあったという。「先代は、成果がすぐに見えない取り組みにコストをかけるのを嫌う傾向があって、広告やコンサルティングへの投資にはなかなか理解を得られませんでした」と山上氏。そこで、効果や意義が伝わるよう説明を工夫し、丁寧にコミュニケーションを重ねたことで、徐々に歩み寄ることができた。

山上氏が始めた新たな取り組みのひとつに、YouTuberとのコラボレーションがある。共同でDIYシーンで使えるサロペットを開発したのだ。これまで企業の“現場”で着用されてきたユニフォームを、一般消費者にも使ってもらおうという試みでもある。山上氏は、「BtoC事業に本格参入する狙いではなく、メディアでの露出を増やすことで知名度を高め、BtoB事業につなげたい」と、その目的を明かす。

いま、労働現場の安全管理や健康管理を強化する動きから、作業服にはハーネスや冷却機能の装着など、より高度な装備が求められるようになってきた。こうした変化を受け、ユニフォームメーカーへの需要も拡大している。山上氏はこの追い風を捉え、中期経営計画では大幅な売上増をめざしている。「そのためには人材が不可欠です。これまであまり注力してこなかった新規開拓営業にも、積極的に取り組んでいきたい」と話す。代表取締役に就任して約1年、30代の若きトップとともに事業をつくっていける人材を求めている。

創業者である曽祖父の時代から受け継がれてきたものは何かと尋ねると、山上氏は「品質です」と答える。長い歴史の中では、価格を重視して安価な製品を量産する競合に押され、苦戦した時期もあったという。「それでも長年うちの商品を買ってくれるお客さまがいるのは、品質を信頼してくださっているから」。山上氏も先代たちの思いを継ぐ覚悟だ。

(取材・文/荒木さと子 写真/三原李恵)

アサヒ産業株式会社

代表取締役

山上 翔平氏

https://sunasahi.co.jp

事業内容/ワーキングウェアの企画・製造・販売