Bplatz press

クモノスコーポレーション株式会社の3D技術がもたらす復興から未来への挑戦

2023.04.06

1995年の阪神・淡路大震災の復興支援をきっかけに、測量設計会社を起業した中庭氏。「1日でも早く被災地を測量し現状を伝え、復興支援するのが信条。当時の測量技術では充分貢献できないと感じ、日本ではじめて建設業界に3Dレーザースキャナ(以下3DLS)を導入したのが当社です」。その後、ゼネコンやエネルギー、通信関連の大手企業から仕事を受注するなかで3DLSの技術力を高め、計測2,500件以上、販売台数約300台という業界トップクラスの実績であらゆる分野にDXソリューションを提供。東日本大震災や熊本地震の際には、いち早く駆けつけて被災地復興に貢献した。

自社所有の3Dレーザースキャナ。

計測器械の技術開発や改良によって約80の知的所有権を取得しているのも同社の特長で、なかでも100m先にある0.2㎜のひび割れを早く正確に計測しデジタルデータ化できる「KUMONOS」はヒット商品だ。それまでの計測は手作業、成果品は手描きのスケッチで、ひび割れの経年変化をみることはできなかったという。その技術は日本ものづくり大賞をはじめ、数々の大臣表彰を受賞。また、G20大阪サミットでは各国首脳へ技術を紹介されるなど国内外で高く評価されている。

さらに、2019年にデジタルファースト法が施行され、追ってデジタル庁が発足してからは社会のデジタル化が一気に進み、インフラや構造物の点検業務で近接目視を求める規制が撤廃されることも追い風になった。「ようやく当社のデジタル化技術が大きく貢献できる世の中になりました。当社が10年先を進んでいたんですね」と笑う中庭氏。これからは“守る測量”の時代だと、インフラ構造物の維持管理にも貢献。世界遺産区域やクラウドファンディングによる歴史的建造物の3Dデジタル化、メタバースへのデータ活用などにも参画している。

バックパック型は歩行しながら被災地の3D計測が可能だ。

創意工夫をモットーに森羅万象の3Dデジタル化に取り組む同社は、2025年の大阪・関西万博を協賛する企業に手を挙げた。ドローンや移動型3DLSを使って会場基盤整備工事やパビリオン建設のための測量を行う予定で、すでに2020年のドバイ万博には弾丸ツアーで訪れ、日本館の3D点群計測を経験している。「できれば、大阪・関西万博の全パビリオンを計測して3Dデジタル化し、後世に残したいですね。人類が何千年もかけて培ってきた2次元図面の3次元化が実現できるいま、当社の高度な3Dデジタル化技術でデジタル変革の流れを創りたい」。

測量会社からIPOをめざすIT企業へと変遷をたどるクモノスコーポレーション。3次元計測ビジネスのトップランナーとして、エネルギッシュに前進を続ける。

代表取締役社長 中庭 和秀氏

(取材・文/花谷知子)

クモノスコーポレーション株式会社

代表取締役社長

中庭 和秀氏

https://www.kankou.co.jp

事業内容/3次元計測および技術開発、構造物点検、機器販売など