産経関西/産創館広場

自由な発想 金属加工の概念変える

2013.05.06

 歩行補助装具やリハビリテーション器具などの福祉・医療機器の部品、高級インテリア装飾品などの金属加工・製作を行う株式会社定松製作所(大阪市東成区)。58年前にプレス加工業として創業したが、現在では真鍮(しんちゅう)・アルミ・鉄・チタン・ステンレス・銅・ニッケルなど、難切削材を含む金属全般の切削加工を行い、小ロットの発注から、特注品の製作まで対応する。

 特に得意としているのがチタン加工。チタンは、強く、軽く、さびないなどの特性があり、航空機やゴルフクラブから体内埋め込み型の手術固定具などの医療・福祉製品にも使われている。定松瑛社長は「相手の希望を聞き、徹底的に対話と提案を繰り返すのがうちの強みです」と語る。たとえば、義肢・装具のフレーム部分の加工では、障害や個人差により、一点一点仕様が違うが、その要求にも妥協はない。製品の使いやすさはもちろん、仕上げの美しさには定評がある。その根底に共通するのは、使う人への「思い」だ。

 多様化・複雑化する福祉・医療機器のニーズに臨機応変に対応するため、最新の設備導入を検討している同社が挑戦したのが「中小製造業設備投資等助成」の申請だ。ここで力を発揮したのが娘婿の西井清氏。協力企業の先輩経営者たちにもアドバイスをもらいながら、多岐にわたる複雑な申請書類を短期間で書き上げたという。「初めての挑戦で一発受理。私の方がびっくりしました」と語る定松社長。この設備が導入されれば、より難度の高い高度加工にも対応できるようになるほか、外注加工の内製化も可能になる。書類を作成する過程で、経営目標の明確化、理念の共有化もできたという。

 「私は変人」と笑う社長だが、その開発や技術力向上にかける情熱は人一倍強い。一方、西井氏のきまじめさも変人級だ。「つくる情熱と使う満足が合致してはじめて、製品の価値が決まる」。社長の提案力・発想力と、娘婿の真摯さ・誠実さ、その両方が掛け算となり、ますます多様化・高度化するニーズに真っ向から勝負を挑み続ける。
 
(大阪産業創造館プランナー 内田貴美代)

sadamatsu
▲定松製作所が加工したチタンを使った歩行補助器具(川村義肢株式会社製)。
仕様が違う加工はすべて手作業のため、熟練の技術が要求される。

株式会社 定松製作所

http://www.titan-kako.com/