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「女性後継者交流会」開催!4人の女性後継者による座談会

2014.01.09

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社会においては女性の社会進出が大きく前進する中、まだまだ少ないのが女性の事業承継。経営者の父から承継するには、跡継ぎ=男性というイメージの払拭、社員との関係、家族間での話し合いなど、悩める問題はいろいろあるようだ。そんな中、女性として事業承継する経営者は、どのような視点で会社の舵取りをし、子育てや家族との日々を両立させているのか。今回は、大阪で事業承継し活躍する女性経営者4名に、なかなか聞けないプライベート部分も含めインタビューした。(聞き手・大阪産業創造館 マネジメント支援チーム プランナー 荒井祐己子)

 

〉〉〉まず、事業承継された経緯をお聞かせください。

笹井:当社は戦後すぐに祖父が創業し、私が3代目です。もともと2人の姉は医師、歯科医になっていて、私は新聞記者をやっていました。

ちょうど私が社会人3年目の時、突如として父が体調を崩しました。折りしも私は仕事に悩んでいて、これを機に「父の仕事を助けよう」って入社することにしたんです。

とはいえ、何もわからない状態でしたから、少しずつ仕事を覚えていく計画でした。でも、途中さらに父の体調が思わしくない状態になってしまい、事業承継の計画を前倒すことになったんです。入社2年目から経理の仕事を覚えはじめ、その翌年には専務取締役に就きました。

境:実は私も、父からの誘いがきっかけなんです。家族構成も笹井さんに似ていて、兄は2人。世間では「男が跡継ぎ」というのが常識ですから、女である私は、あまり父に相手をしてもらえませんでしたね。

ところが兄は医師になり、もう1人の兄は経営者にならないと言い出しました。私もアパレルの会社で働いていたんですが、ある日急に父から連絡があったんですね。「今仕事が大変なので手伝って欲しい」と。私はこれまで父に頼られたことがなかったので、驚きながらもよほどのことだと思い、1年親孝行のつもりで家業を手伝うことを決意しました。

初めは「父の仕事の手伝いを」と読めない決算書など勉強しておりましたが、仕事を知ろうと現場と向き合っているうちに、会社から抜け出せない雰囲気が生まれてきたんですね。私もそれを感じて次第に覚悟を決め、後を継ぐ決意をしました。社長になり今年7年を迎えます。

宮田:私は事業承継といっても、みなさんと少し形が違うんですよ。もともと母が姉妹で創業した事業を承継するところが、親族間でさまざまな問題が生じてしまい、結局は自分で事業を立ち上げることにしました。母の事業と同じ業界ですから、商売のやり方やノウハウを承継した形ですね。

佐藤:私は2人の弟がいまして、長男が父の会社を事業承継する予定で話が進んでいました。でも、親子とはいえ男性同士ですから、仕事のやり方や意見が対立してしまうことも。そうしたことが何回があって、事業承継自体が白紙になってしまったんです。

私はそんなやり取りを、よく父から聞いていました。当時はすでにカプセルホテルの全盛期は過ぎていたので廃業を勧めましたが、父から「会社に来てほしい」と何度も電話がかかってきて…。最後は根負けして「これも親孝行や」と半ば勢いで決断しました(笑)

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〉〉〉人生、ホントなにが起こるか分かりませんよね。

佐藤:その通りです。私なんか、今とはまったく違う業種の会社で管理職を務めていたんですから。すでにその先の人生設計は出来上がっていたんです。まったく想像もしていませんでしたよ(笑)。

笹井:私も驚いているんですが、あれほど体調が思わしくなかった父は、事業承継が決まったころから元気になって、今ではピンピンしています。経営に関しては一歩退いていますから、こちらも助かっている訳ですが。

境:いざ事業承継となると、家族が一枚岩になるってホント大変ですよね。お金の話には誰もがシビアになりますし、社員ひとりひとりの生活設計にも関わりますので、トップが変わるとなればいろんな感情が沸き起こってしまいますよね。父娘の考えが分かれるとなおさら!(笑)

宮田:会社を創ったお父様って、きっと「自分や家族が幸せになるように」と思って会社をつくってきたはず。だから事業承継後は、やりたいようにさせてあげるというのも親孝行なのかなとは思いますね。

笹井:境さんの話で社員さんのことがありましたが、最初、うちの社員はあまりに反応がなくて困り果てました。これまではトップダウン経営だったので、仕方ないのかも知れませんが。

佐藤:うちも父がトップダウン型だったので、社内はイエスマンばかり。私とは意見が合わない社員もいましたが、自然と会社を辞めていきましたね。

境:事業承継って、きっと社員も「とんでもないことになった」と思っているはず。雇用主が、ある日突然変わるんですから。社員が辞めてしまうことも、当然起こるでしょうね。でも、体制を一新することで、これまでにない発展のチャンスとも捉えることができます。

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〉〉〉女性という点でご苦労された事は?

境:現場で働く方からすれば、「60、70キロのガスボンベを転がせない女が、会社のトップでええんか!」という不安があるのが本音だと思います。いざという時、どうするか。私自身が責任を背負えるのか、と悩んだ時期もありました。

宮田:ちょうどニュース報道されていましたが、ゼネラルモーターズでは来年1月に、初の女性CEOが誕生するそうですね。女性の社会進出という点で、日本は本当に後進国です。

佐藤:さっきもお話しましたが、私は会社で管理職をやっていました。単に、仕事がデキるという点でいえば、ほかにも社員がたくさんいる。なのに、なぜ私なんだろうと上司に聞いてみたんですね。

すると、上司からは「多くの女性は、男性を追い込むように話をしてしまう。でも君は違う」とのこと。私は「それだけかい!」ってびっくりしましたが、男性って女性とは違って、そうした部分を気にするもんです。

境:以前、少し問題があった社員の行動を改めさせようと、一対一で懇談していました。じっくり時間をかけたのですが、私の話をなかなか理解してくれなくて…。そんな折りに、ひょこっと父が会社へやってきました。

父は私と二、三言を交わしたあと、今度は社員の肩をポンポンと叩き、「人生いろいろあるけど、あんじょうがんばりや」との一言を。すると、社員は涙を流したんですね。

わずか数秒で社員の心をつかんだ父。これには正直負けたと思いました(笑)。男性の美学というか、見方が変わった瞬間でしたね。

宮田:社長は、「父であれ。母であれ」って感じかな。社長といえども、親のように1つ高い目線から、社員に愛を注ぐ。そうすると、ついてくる側の意識も変わると思いますね。

逆に、「社長ひとりでは会社が動かせない」というのも真実です。自分の代わりに動いてくれる社員に対して、「頼りにしてるよ」と想いを伝えるのも大事です。人は財産ですから。

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〉〉〉父母という話が出ましたが、子育てや結婚などプライベートは?

境:私は結婚前に今の会社へ入りました。後継者として実力ない自分に焦りもあって、四六時中会社のことを考えていたし、すべてを捧げるつもりで使命感に燃えていました。そんな私に、母は「私が壊れるんじゃないか」とまで心配していたようです。

そうした日々を過ごす中、ある方からこんな話を聞きました。「普通の人と同じ生活をするからこそ、社員の気持ちがわかるようになるんじゃないか」って。それから結婚をし、子どもを育てながらの毎日は正直大変ですが、やはり家族っていいです。いろいろあっても「みんなも大変だけどこうして頑張ってるんだなぁ」と共感できるようになりました。

宮田:夫婦ともに働いていると、お互いに社会では同志ですよね。だから、仕事について互いにいろんな話をします。飼っているネコの話だけは、ずっと私がしゃべってますが(笑)。「近所の方へ自分から頭を下げる」という商売人らしいルールも、夫は実践してくれてますよ。

笹井:夫の理解って、本当に大事だと思います。私も目の前のことにまっしぐらなタイプで、だいたい家事はおろそかになります(笑)。時には外食にしたり、お掃除をルンバに任せたりと、夫もいろいろ許してくれています。

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〉〉〉毎日仕事をされるモチベーションとは何でしょうか?

笹井:これは私の性格でもあるのですが、どんなに苦しくても、小さな達成感があればがんばれるんです。おそらく、そういうことがもともと好きなんでしょうね。

佐藤:笹井さん、いいじゃないですか。私は会社に入ったものの、正直いって本業に対して良いイメージがなかったので、達成感よりも前に、存在意義について思い悩みました。

そんなある日、お客さんからこんな一言があったんです。「カプセルホテルやったら絶対空いてると思って来たんや!」と。普段なら「馬鹿にされた!」と怒りそうなものですけど、この時にふと「『必ず泊まれるホテル』って存在は、地元にとっても大事じゃないか」と思ったんですね。事業を通して、地元に貢献できている。これがわかってからは、仕事へのモチベーションがあがりました。

宮田:いつもお店では「お客様のオアシスであって欲しい」と思っています。立ち寄られたお客様は、日常のグチや悩みごとなどいろんな話をされて、スッキリして帰られる。そんなお客様の姿に、喜びを感じていますね。

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〉〉〉最後に、今後女性の立場で事業承継される方へのメッセージを。

境:迷ったら、まず前に出ること。苦労した分だけ価値があると思って、どんどん前に出ることです。それをやっていくうちに、先入観や変なこだわりなんかがなくなってくるもんだと思います。

佐藤:そう。それぞれ違った目線で悩まれているかも知れませんが、チャレンジして欲しいですね。やる前じゃなく、やっている中で考える。みんな「なんとかなる」と思ってやってますから、大丈夫です!

境:そうやって図太くなっていくんですかね。(笑)

宮田:経営に図太さは大事よ。ピリピリしてたらなんにもでけへん。(爆笑)

笹井:たとえ会社がつぶれても、命までは取られませんし。気負うことなく、自分に正直に。真面目に生きていれば、おのずと道はひらけますよね。

宮田:その通り!だから、もし継ぐことを迷っているなら、絶対に継いだ方がいいんです。経営者になることで広い視野が持てるようになる。そして、人にも感謝できるようになります。

女性経営者が、シングルマザーや子育て中の女性などを雇用する。それが増えれば、社会への理解も進みますし、結果として子どもが増えます。そして日本の未来も明るくなります。あなたが踏み出す一歩を、私たちも応援しています!!

 

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デザインルーム カシハラ 宮田日出美さん
創業/1949年  従業員数/5名
事業内容/婦人向けオートクチュールを展開。母が姉妹で創業した事業の承継ではなく、同業界にて事業を開始する。

 

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サンプレ株式会社 専務取締役 佐藤可奈さん
http://www.3pre.com/
設立/1985年  従業員数/25名
事業内容/東心斎橋にて、カプセルホテル「サンプレイン長堀」を経営。女性も利用しやすい安全かつ清潔な空間を提供する。

 

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株式会社マスコール 代表取締役社長 境順子さん
http://www.masscoal.co.jp/
設立/1958年  従業員数:25名
事業内容/工場や医療現場などで使用する高圧ガスボンベを製造・販売。2007年に事業承継し、代表取締役に就任する。

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平安伸銅工業株式会社 専務取締役 笹井香予子さん
http://www.heianshindo.co.jp/
設立/1953年  従業員数/23名
事業内容/「突っ張りポール」「突っ張り棚」などを開発。ほか家庭用品、DIY用品、各種収納用品などの製造・販売を手がける。

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▲上記イベントは終了いたしました。ありがとうございます!