脱白菜で活路 「進化系キムチ」市場をけん引

近年、スーパーの漬物コーナーではキムチが存在感を増している。その種類も王道の白菜、大根、キュウリにとどまらずネギ、ニラなどの野菜、ホタテやカキなどの魚介類、海苔やもずくなどの海藻類などへと広がりを見せている。こうした“進化系キムチ”をけん引するのが有限会社高麗食品だ。

黄氏の祖母から母へと受け継がれた高麗食品のキムチづくりも、当初は白菜が主体だった。だが、多くのメーカーがひしめきあう中、スーパーの売り場では安値競争を強いられるようになった。そこで状況を打開しようと、10数年前から梅干しやラッキョウなど白菜以外のキムチの商品化を進めてきた。3種類のヤンニョム、コチュジャン、醤油ダレを素材ごとに組み合わせ、旨味を引き立てている。併せて取り組んだのが、ブログでの発信だ。「なぜキムチが苦いのか、なぜ糸を引くのかといった雑学的な話題や、商品開発に込めた想いなどをコツコツと絶やさず続けてきました」。だが、開発した商品は、なかなか日の目を見ることはなかった。

工場長 黄成守氏
悶々とした日々を送っていた3年前、ある大手食品スーパーのバイヤーから「ホームページを見て高麗食品の取り組みを知った。安いものより面白いものをという当社の考え方に合致する」と声がかかり、取引がスタート。さらにその半年後には、今度はブログがきっかけで全国ネットのテレビ番組に、長男である社長、二男の専務と共に三兄弟で出演。“黄さんのキムチ”の知名度が一気に向上した。番組内では、沖縄のメーカーが製造する「もずくキムチ」も紹介されていたが、その流れで出演者が「黄さんも“もずくキムチ”つくりなさいよ」とコメント。そのひとことが、黄氏の心に火をつけた。

実は以前にももずくキムチを商品化したことがあったが、500個も売れず、最速で廃番となった苦い思い出がある。「あの時は、酢の物として打ち出して失敗してしまった。今回は、コンセプトを明確にし、子どもの頃にごはんのお供で食べた韓国のところてんの味付けを参考に改良しました」。ある食品専門店がその商品に目をつけ、150g448円で店頭に並べたところ、月販7万個という驚異的な売上げを記録した。「白菜キムチはスーパーで198円というのが相場ですが、非日常的な買い物の場として訪れる食品専門店では高価格でも売れることを改めて実感しました」。もちろん、その価格に見合う商品の開発を10数年かけて重ねてきた蓄積があればこそだ。

進化系キムチ市場をけん引する今も、黄氏は「私たちの商品が一番だとは思っていません」と謙遜する。「だって、それぞれの好みがありますから。だからこそ、“それぞれの好みに合うキムチを”という思いが開発の原動力になっています」。現在は、東海地方にある大手スーパーでは高麗食品のキムチだけを30種類集めたキムチコーナーも展開されている。進化系キムチを武器に次に狙うのは東京のマーケットだ。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
※掲載写真は、編集部にて撮影したもの以外に、取材先企業からご提供いただいた写真も含まれています。
《 失 敗 秘 話 》
「おいしい」だけじゃ売れない理由
数多くの商品開発を手がけてきましたが、消えていった商品も数知れず。その一つが果物の柿を使ったキムチでした。商品自体はおいしくできたのですが、なぜ売れないかを考える中で、“用途が明確でない商品は売れない”という結論にたどり着きました。「柿のキムチって、いつ食べていいかわからないでしょ?」と(笑)。現在は、ごはんのお供、お酒のつまみ、箸休めの3つの用途を明確にした商品開発方針を貫いています。









