オファー型就活サイトで「橋渡し」
毎年約70万人の大学卒業生のうち14万人が卒業時未内定者、20万人が早期に離職。つまり、48%の大学生が最初の就職を失敗しているということになる。とはいえ、学生も就職活動に向けて自分を磨き、企業も採用コストと時間をかけ、社員を育てて生かしたいと思っている。この学生と企業とのミスマッチを解消するため、従来の学生からのエントリー型ではなく、企業から学生へのオファー型就活サイト「Offer Box」を立ち上げたのがi-plug(アイプラグ、大阪市淀川区)だ。
Offer Boxでは、学生が自分のプロフィルを文章だけでなく、動画や写真で表現できるため、普段の活動など“素の自分”を紹介することができる。代表取締役の中野智哉氏は「次世代を担う若者の可能性を広げ、活躍できるよう学生と企業をつなげていきたい」と、同事業を立ち上げた思いを話す。エントリー型の場合、学生がエントリーシートや履歴書を企業ごとに送る必要があった。人気の高い企業の場合、100人の募集に対し、2万人を超えるエントリーが殺到。オファー型なら、両者の負担も大幅に軽減できることになる。開設以来、1年余りですでに100社、2400人以上の学生が登録している。さらに海外にいる日本人留学生向けに新たに立ち上げた「Offer Box Global」も、海外展開を行っている企業からの引き合いも多い。
しかし、これまで順調だったわけではない。立ち上げ当初はこれまでと同じ人材紹介型の就活スキームだったため、新規性もなく、ベンチャー企業としての信用も得られず、営業で苦戦。このため、営業をいったん停止し、どのような手法で学生の採用をしたいのか、大企業へのヒアリング調査を始めた。結果、企業側の欲しい人材像は明確で、そのイメージに合う人材に直接アプローチしたいというオファー型であることに行き着いた。早速ビジネスモデルを抜本的に切り替えて再提案したところ、多くの企業が利用してくれることになった。さらに新しい就活のスタイルとしてマスコミにも取り上げられたことで信用度も高まった。2016年卒からは国の方針で就活期間が短くなることが発表された。同社には今後ますます学生と企業をつなぐ「橋渡し役」を担う期待が高まる。
(大阪産業創造館 プランナー 松原美華)
▲学生も企画会議に参加。彼らの意見をサービスに生かしている=大阪市淀川区のアイプラグ
株式会社i-plug