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わりの音を求めるドラマーの希望に沿った製品を開発する一方で、特長を持つ7つのシリーズをそろえた。ドラム専門誌や打楽器店に「国内唯一」「MadeinJapan」を強調した広告を出したり、自社HPを立ち上げるとユーザーが徐々に拡がっていった。「どのメーカーが使う材質も同じで加工法もシンプル」であるだけに先行メーカーのシンバルが出す音と比べて明確に「小出シンバルらしさ」を打ち出すことはたやすいことではない。そこで2年前、合金メーカーが特許を持つ技術ですずの比率を増やしチタンを混ぜ、硬さを増した青銅を開発してもらい、新シリーズとして商品化した。「叩いてからシャーンという音の反応が速く、長い」ことが評判を呼び、ブラスバンド向けに売上げを増やしている。硬さを増すことで素材も丈夫になることから大学の協力を得て製品寿命がどれほど長くなるか科学的に検証してもらっているところだ。「小出ならではの音と質を追求し、いずれは本場のアメリカに輸出したい」と小出氏。あせらず、じっくり夢を追いかけるつもりだ。唯一の国産シンバルメーカー新素材でめざすは世界小出社長のロングインタビュー公開中?http://bplatz.sansokan.jp/国産唯一のシンバルメーカー。といってもその歴史はまだ浅く、市場に製品を送り出して10年余りの新規参入組だ。競合のない“ブルーオーシャン”ならもっと参入業者があってもいいはずだが、寄りつかない理由がある。「海外有力メーカーによる市場が出来上がっている。マーケットが小さい。素材となる青銅の情報が乏しい…」。そのハードルの高い市場に従業員4人の町工場が挑んだことからはじまった。同社は金属板を回転させながら棒を押し当てて少しずつ変形させるへらしぼりを専業とした加工事業で65年の歴史を持つ。楽器メーカーから依頼の入った真鍮を素材にした入門用のシンバルやティンパニの胴を製造したことはあったが、家電や車両部品などの仕事に追われ、いつしか生産しなくなった。だが15年ほど前、ドラムを趣味にする若手社員と話をしていた際、かつてシンバルを生産していたことを話すと身を乗り出してきた。シンバル生産復活に向け、休日を利用しての研究が始まった。海外製のシンバルを購入して金属の組成を調べてみると、銅とすずが混ざった青銅とわかった。だが青銅メーカーは国内にほとんどない。インターネットで調べ、ドイツの伸銅品メーカーからようやく手に入れることができた。プロのドラム奏者などに音を聞いてもらいながら、材質、加工するハンマーの形状、叩き方を変え、加工法を習得。こだ青銅版をそれぞれの大きさにカット。→機械でハンマリングし、音をつくり込んでいく。→さらに職人の手によるハンマーで微調整。→表面を削って音溝を加工し、質のいい音域が出るよう調整していく。株式会社小出製作所代表取締役小出俊雄氏http://koidecymbal.com/05