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安定事業を無償譲渡シリコンバレーに乗り込んだ起業家の挑戦山本氏率いるChatWorkは変化に強い組織をめざし、「思い立ったらすぐ行動」を心がけている。だから2010年に開発したビジネスチャットツール「ChatWork」の可能性が見え始めた時点で、そのプロダクトに経営資源を集中投下するかどうか幹部会議で議論した。その結果、ChatWork一本に絞り、既存の事業は統廃合することに決まった。興味深いのは、シリコンバレーの挑戦の軌跡をフルオープンにしていること。移住までの過程、現地法人設立、現地での営業活動など、日々の動きをfacebookに投稿し続けている。「挑戦のプロセスを詳細にレポートすれば、これから海外展開をめざす中小企業に役に立つと思って」。そう話す同氏に気負いは見えず、むしろ自身の状況を面白がっているように感じる。子どものころから、他人ができることには興味がなかった。「反対に、みんなが諦めたことは、めっちゃ燃える(笑)」。物事を理屈や机上の空論で説得するのは好きじゃない。まず行動し、「はいできました」と結果を出す。そんな実践ありきの方法でやってきた。日本を憂いて自ら先陣切って行動する。その意気込みは、アメリカに留学した学生時代に培った。「世界中で売れているアメリカの製品は、中身は日本の技術だったりする。日本人の技術力は高いのに、アメリカにいいように利用されている気がして悔しかった」。だから2000年に会社を立ち上げたときも、「アメリカに負けたくない一心だった」。しかし、ある経営者のひと言で変わった。「山本君、『血気に老少ありて、志気に老少無し』という言葉がある。いまの君にぴったりや」。これは江戸末期の儒学者・佐藤一斎の言葉で、「血気盛んなモチベーションは年齢と共に衰えても、志によるモチベーションは生涯衰えない」という意味。この言葉を聞いた瞬間、ハンマーで頭を殴られたような衝撃を受け、「俺はアメリカを敵対視したいんじゃない。日本をもっと良くしたいんだ」とストンと心に落ちた。シリコンバレーに移住して大変なのは、アメリカ人の考え方に馴染めないこと。「笑い話ですが、何でそんなにピザばかり食べるのかとか(笑)」。とにかくアメリカ人の働き方を知るには、アメリカの会社に入るのが一番と考え、現地のIT企業にインターンシップを申し出て働かせてもらった。アメリカに来て改めて思ったのは、日本人は優秀だということ。ただ、世界で勝負するには、日本にいては圧倒的に情報が足りない。「だからヒト・モノ・カネ・情報が集まるシリコンバレー、緻密で正確なものづくりが得意な日本、マーケットが拡大している東南アジアを3極に分けて考えれば、日本人の役割と価値が明確になると思った」という。同氏の世界を見据えた挑戦はこれからも続く。日本にいる我々もfacebookで彼の奮闘を追いかけながら、自らの挑戦の道筋を探っていこう。机上の空論を語るよりまず行動して結果を出す「打倒アメリカ」から一転ITを通じて日本を良くしたいなぜ会社の社長がインターンシップに?会社DATA設立/2004年従業員数/30名事業内容/2000年、中小企業のIT化を支援するECstudio(現ChatWork)を創業。2004年の法人化以来、社員第一主義を貫き、2年連続「日本一社員満足度の高い会社」に認定される。現在は山本氏自らシリコンバレーに居を移し、海外展開に力を入れる。ChatWork株式会社代表取締役山本敏行氏http://www.chatwork.com/ja/?山本社長のロングインタビューはウェブマガジンで公開中http://www.sansokan.jp/bplatz/?「ChatWorkシリコンバレー挑戦日記」https://www.facebook.com/silicon.02Bplatzpressvol.143valley.challenge