産創館トピックス/講演録

新経済連盟 KANSAI SUMMIT 2016

2016.09.29

「新しい社会のインフラを創造する 〜起業から現在までの軌跡〜」


[スピーカー]
三木谷 浩史
楽天株式会社 代表取締役会長兼社長(新経済連盟 代表理事)
1997年2月、株式会社エム・ディー・エム(現・楽天株式会社)設立、代表取締役社長就任。同年5月、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を開設。2012年、ハーバード経営大学院「2012年度卒業生功績賞」を史上最年少で受賞。


藤田 晋
株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長(新経済連盟 副代表理事)
1998年、24歳でサイバーエージェントを設立。創業から一貫して、インターネット産業において高い成長を遂げる会社づくりをめざし、現在はインターネットテレビ局「AbemaTV」を中心にメディア事業、広告事業、ゲーム事業を展開。


[モデレーター]
吉田 浩一郎
株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 CEO
ITを活用した時間や場所にこだわらない働き方に着目し、2011年に株式会社クラウドワークスを創業。2015年、経済産業省 第1回「日本ベンチャー大賞」審査委員会特別賞を受賞、グッドデザイン・未来づくりデザイン賞受賞。

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企業を成長し続けさせるために必要なもの

「東京でも、この2人が公に話す場はなかなかない」と興奮気味に紹介するモデレーター、クラウドワークスの吉田氏。まず、創業時の思いを両氏に尋ねた。

楽天の三木谷氏は、「企業哲学的なものを、早い段階で醸成することがポイントになると思い、同じ志をもつ人だけを集めた」。そして、「楽天市場の売上げが一日10万円だった頃から、1兆円めざすぞ!」と言い続けたと明かした。

サイバーエージェントの藤田氏は、「創業以来、三木谷さんをはじめ、付き合う人の志や視点の高さにかなり影響を受けてきた」と話す。

直近の時価総額は楽天が約1.9兆円、サイバーエージェントは約3600億円。ある程度の目標に甘んじず、企業が突き抜けて成長するために必要なことは何だろうか。

三木谷氏はビジネスをスキーに例え、「足もとを見ながら、遠くも見るということ。物事を必ず達成するという強い営業的なカルチャーと、長期にわたる戦略性の両方を走らせなくてはならない」。そして、「失敗しても大義があれば、社内外から助けてもらえる」と語った。

15年以上の付き合いがあるお互いの印象

時を同じくして上場した2000年以来、長い付き合いのある両氏。お互いの印象はどのようなものだろうか。

藤田氏は三木谷氏を、「グローバルな事業展開や新経済連盟の立ち上げなど、常に先を歩いて、自分はまだまだだと思わせてくれる人」と述べる。

三木谷氏は藤田氏に対して、「若手の使い方が非常にうまい。集めるのも、やる気を出させるのも。AbemaTVのように勝負するときはするし、見習うところがある」。

藤田氏は、自分がピンチのときに三木谷氏から教えてもらったことを今でも覚えている。「上場後、4期連続赤字でげっそりやつれて相談したときに、『趣味でももてよ、ワインかゴルフか乗馬』と言われた(笑)。長い仕事人生の中で、時間をやり過ごす方法も知っておくことを三木谷さんに教えてもらった」。

関西に起業家が生まれ育つ地盤づくりを

三木谷氏は兵庫県出身、藤田氏は福井県出身。起業家には関西人が非常に多く、もともと関西には起業家を育てる文化があるが、起業の場所として東京を選ぶ経営者が多い。
関西で起業家が生まれ育つためには、「この新産業だったら、関西に行かなくてはと思える特色が欲しい」と藤田氏が話すように、関西に拠点を置くメリットをつくっていく必要があるだろう。

三木谷氏は、シリコンバレーだけでなく各地にITセンターがある米国を例に挙げ、「関西はITのハブになる可能性がある。そのためには、大胆な行政でもって関西だから可能であるという環境を整備し、起業家が生まれ育つ地盤を固める必要がある。新経済連盟としても、関西のスタートアップ企業や新産業の発展を支援していきたい」と期待を込めた。

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(取材・文/花谷知子)

一般社団法人 新経済連盟

http://jane.or.jp/

eビジネス・ITのさらなる活用と健全な発展を核に、様々な新産業の発展、イノベーションを促進し、日本の将来の成長戦略を描き、実現していくことを目標とする団体。