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ローテク極めたものづくりで新市場へ、世界へ

iwasaki

「納期が遅い。品質が悪い。対応もひどい。このままやったらつぶれるで」。大学卒業後、取引先である事務機メーカーに入社して知った家業の評判は最悪だった。それでも父から「来てくれ」と懇願されれば拒めない。28歳のときに「次の就職先のことも考えながら」後を継いだ。

製造現場ではけんかが絶えず、営業担当は喫茶店での漫画が日課。「どうせつぶれるんやったらやりたいようにやる」。一念発起して、現場に日々の清掃と在庫管理を促すと、「そんなんわしらの仕事と違う」とごっそり辞められた。

一方で新卒採用で補った社員には研修を欠かさず、「誰でもつくれるローテク製品やけど、効率のいいつくり方をとことん考えようや」と呼びかけていくうちに、海外製品に対しても価格競争力がある生産体制が実現。そしていつの間にか3代目経営者として生きていく覚悟も決まっていった。

その後、たまたま知り合った熊本のエレクトロニクス会社が新たに病院向けに開発した機器の販路開拓に難渋しているのを耳にする。手術中に大量に使われた医薬品のチェックは看護師の手作業に頼るためどうしても漏れが生じがちだ。機器はバーコード情報などから医薬品の種類と数を瞬時に特定し、請求漏れの防止や最適な投薬につなげることができる。

着眼点さえ良ければローテクでも十分戦える、と営業、製造を引き受けることにした。

しかし、医療機器を手がけたことのないメーカーの商材に医療機器商社は乗ってこない。岩﨑氏自らトップセールスで院長を訪問し、経営面からみた導入メリットを訴えた。京都大学医学部附属病院への納入が決まると、「売らせてほしい」と商社の態度が変わった。

「良いと思えるものならどんなに苦しくても強気で勝負する。商いは対等な気持ちで向かっていかなアカンのです」。この強い気持ちで欧米市場にも打って出る。

取材中「しょうもない」の言葉をひょうひょうと連発する岩﨑氏。ずっと続いてきたことを一歩引いて見たとき、どれほど瑣末なことにこだわってきたか気づかされる瞬間がある。「しょうもない」ものを絶ち切って、いかに気持ちよく働ける職場にできるか、いかにローテクを突き詰められるか、いかに堂々と売れる商品をつくれるかを考えてきた結果、今がある。

社員たちは自らの給与を稼ぎ出すため、自分たちで生産効率の改善法を考え、付加価値の低い仕事は断る。存続をかけて生き抜いてきた先にできたのは一人ひとりの社員が自立する会社だ。

誌面では紹介しきれなかったロングインタビューはコチラ
→「全員が自分で考える風土」が会社を強くする。三代目社長の組織改革と新市場進出。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

2015年12月09日
株式会社イワサキ
代表取締役社長  
岩﨑 基造氏

事業内容/創業90年を迎える金属加工部品の企画、開発、設計、製造。岩﨑氏で3代目。

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