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縦横無尽に 世界を駆ける オーラルケア製品

2014.11.10

歯間ブラシ、歯ブラシをはじめとするオーラルケア製品をベトナム、台湾の2工場で製造している。売上げの地域別内訳は米国と欧州が35%ずつ、それに続くのが日本で25%、残りの5%がアジア諸国だ。「必要とされるものを、必要なところへ」と岡村氏。まさにボーダレスだ。

創業は1907(明治40)年。当初からイギリスのチェーン店、ウルワースに歯ブラシを納めるなど早くから輸出に取り組んでいたが、2度の世界大戦の影響を経て海外展開は一時影を潜めた。

再び輸出を本格的に手がけるようになったのは1980年代に入ってからのこと。「国内の競合大手メーカーがCM放映で一気にシェアを伸ばしたことで大きくあおりをくった。やむを得ず海外に活路を見出したというのが本当のところ」と背水の陣で輸出路線へ転換を図ったことを明かす。

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当時、量販店や百貨店がアジアへ進出し始めており、現地の店に歯ブラシのほか食器、カー用品などを幅広く納めるようになっていった。「日本での商売と違って、ブランド力より品質と価格で評価してくれる。やっていて面白かった」と振り返る。1999年には台湾工場を稼動させ、輸出で接点ができた日本の量販店向けに今度は輸入も始めるようになる。

大きな転機となったのは2002年にベトナム工場が完成してからのことだ。英語版のホームページをつくって情報発信すると欧米のメーカーからいくつも反応があった。すぐさま欧米各社の本社を訪ね、即答でPB商品の生産を受託。その中には米国最大手のオーラルケアメーカーも含まれており、一気にフル稼働に入った。

早くからグローバル市場で戦ってきたことで培った最大の強みを「情報収集力だ」と岡村氏はいう。たとえばヨーロッパにはデザイン性の高い歯ブラシが多く、アメリカでは虫歯に自分で詰め物が入れられるキットなどもある。また、歯ブラシを製造するドイツ、スイスの機械メーカーの担当者とも親密だ。
「世界のメーカー、機械メーカー、歯科医師、歯科衛生士とのネットワークがあるので、今どこでどんな新しい動きが起きているのか手に取るようにわかる」。

こうした情報力を生かし、現在力を注いでいるのが日本市場だ。あえて通常の売り方はせず、テープ状のフロス、成分が土に還る生分解性歯ブラシ、デザインが選べるオーダーメード歯ブラシなどを歯科向け、バラエティショップ向けに展開。

また、高齢化が進む日本市場ならではの商品として介護、訪問歯科分野を強化し、たまった唾液が吸い込める機能を持たせた歯ブラシや、持ちやすい歯ブラシを次々に商品化している。「日本市場で独自に開発したものを今度は海外市場にも送り込んでいきたい。」縦横無尽の世界戦略にますます磨きがかかる。

米国Den Tek社向けのOEM製品。

米国Den Tek社向けのOEM製品。

インドやベトナムをはじめ世界各地で歯ブラシを無償で配布するなど、社会貢献活動にも積極的だ。

インドやベトナムをはじめ世界各地で歯ブラシを無償で配布するなど、社会貢献活動にも積極的だ。

1950 年代、セルロイドに穴を開け、毛を埋める技術を開発し、売上げを伸ばした。

1950 年代、セルロイドに穴を開け、毛を埋める技術を開発し、売上げを伸ばした。

(取材・文/山口裕史)

株式会社オカムラ

専務取締役

岡村 謙太朗氏

http://www.okamuragroup.com/

歯間ブラシ、歯ブラシ、フロスピック(糸ようじ)、デンタルフロスをはじめとするオーラルケア製品メーカー。全売上の75%を海外向けが占める。