産創館トピックス/講演録

≪講演録≫愛され、リピートされる秘訣~「CoCo壱番屋」創業者・宗次氏が大切にする顧客満足~

2014.10.23

社長業ほど成功率の高い商売はない
社長業ほど成功確率の高い職種はないのではないでしょうか。それも大きく成功します。どういうわけか、私の息子は今プロゴルファーをしています。お取引の銀行様のすすめでゴルフ会員権を買い、これがきっかけで、当時中1だった息子が始め独自の練習でプロになりました。プロになってからも大変です。プロが3000人以上参加する試合で200人に残らないと、チャレンジツアーにも出られません。12月にトーナメントを戦ってシード権を取れなかった人がまた200人の中に入ってきますから過酷です。息子は7年ほどプロを続けていますが、生涯獲得賞金はまだ300万円に届いていません。プロサッカー選手でも同じでしょう。天才少年と言われた人ですら300万円も年俸をもらえないのですから。私の周りに画家、小説家の方がおられますが、描いても、書いても売れません。音楽家も一緒です。

だから社長業は大変だ、などと言っていられません。社長業ほど成功する確率が高い職業はない。そう思ってやるべきだと思います。「経営はトップダウンが絶対に良い」「社長の一番の喜びは経営が上手くいくこと」「経営は今が一番楽、明日からはもっと大変だと思え」「経営は苦労の総合商社と心得よ」「経営者の仕事は内容よりも時間の長さにある」「利益の少ない商売にこそ感謝の気持ちを込めよ」「せっかちも重要な能力と心得よ」「経営者は自称3流経営者のほうがよい」「社長は威張らず謙虚が絶対に良い」「会社は社長の器以上に大きくなるもの」「同業、ライバルの動向に一喜一憂するな」「金品のサービスをすると心のサービスが二の次になる」「売上げを競うより社会貢献活動を競え」「究極のぜいたくは必要とする人のためにお金を使うこと」。こんな標語を55集めて本にしています。

「繁盛させたければお客様の声を聞け」という標語もあります。お客様の声を聞きたいと思ってアンケートはがきを全店舗に導入したのが1987年のことです。判断に迷ったらお客様を第一に考える。自分の都合ではありません。経費がかかってもお客様がそれで助かる、嬉しいと言ってくださるのであれば一つでも多く叶えてあげるのです。そういう観点から判断していくと答えはとても簡単です。お客様に店の位置がわかりにくいという要望をいただけば野立て看板を立ててみるのです。

目標はだんだん上がり、振り返ってみたら右肩上がりになっていた。行き当たりばったりでしたが、その時々は一生懸命、まさに命がけでやってきたのです。そうとしか答えようがないのです。幸い、ココイチはずっと順風満帆で、見事な右肩上がりです。どんなに競争が激しかろうが、ライバルに動きがあろうがよそはよそ。ココイチを利用してくださるお客様に対して常に全力投球です。価格競争も一切考えませんでした。今でも客単価は800円を超えます。そのかわり価格以上の幸せをお客様に提供しようとこだわってきました。

もちろん思い通りにはいきません。ココイチの店の7割以上が落第点です。2割が普通です。平日の昼間はパートさんの威力がすごい。でも夜と日曜日は戦力がダウンする。平均点つけると70点以下、つまり不合格です。2割がなんとか70点。1割が75点から80点くらいです。難しいです。どこまでいってもこれで良いということはなく、エンドレスなのです。だからこだわり続けるのです。経営者が「くたびれたしもうこの程度でいいか、あとは店長に任せた」と思うようになった時点で横ばいになってじり貧になっていきます。

私はそういう危機感を持ってお店を巡回していましたし、それが大好きでした。毎日のように出張先では3軒、5軒、多いときは10軒でも珍しくないです。1軒でも多く回りたいですから。営業の様子も、清掃状況も、働いている皆さんの姿も見たい。そしてお客様と同じような視点で見たいので、カレーを注文します。1日5食、7食くらい平気で食べられます。

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寄付は究極のぜいたく
2002年5月31日に経営を引退しました。会社は上場させてもらって株をこんなに持たせてもらって、証券会社から言われるままに放出してお金が預金通帳の中に入って。さあ何をやろうかと考え、社会貢献しようと。お金は一時預かりにして、社会のためにお返ししようと決めました。今までの経営姿勢を“達人シリーズ”として日めくりカレンダーをつくりました。今考えているのは寄付の達人です。寄付は究極のぜいたくです。夢に向けて一生懸命やりたくてもアルバイトをしないとやっていけないというような人に奨学金を出すこともしています。

今日は3時55分に起きて、8時20分に私の母校である愛知県立小牧高校の文化祭を訪ねました。私は県内の学校の吹奏楽部に楽器を送る運動をしています。小学校、中学校、高校にアンケートを出したら、108校から楽器が不足していると回答がありました。その108校を、笑顔やあいさつ、技能など総合評価してランク付けし、各校の必要な楽器を決めて購入額を見積もります。私の母校は評価が2つ低かったので、「13台楽器が不足しています」と窮状を訴えてきたのですが、2台しか送れませんでした。直後に同窓会があって、ぜひ来てくださいと。その同窓会の時に目録を作って贈呈できなかった11の楽器全部贈ると突然そこでサプライズで言ったのです。先生が泣くから私も泣いてしまって。そして今日の文化祭でその楽器が披露されました。

自分のためにではなく、周りに困っている人、一生懸命な人、今日何とか生きながらえたけれど薬も買えないような人がいっぱいいます。皆さんも一生懸命仕事してちょっとでも余裕ができたらそういう人にも手を差し伸べてあげる、そういう社会になって欲しいというのが私の数少ない夢の一つなのです。

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株式会社壱番屋

創業者特別顧問

宗次 徳二氏

https://www.ichibanya.co.jp/