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【ロングインタビュー】「よそとちゃうこと」で次の一手 「社員が自分で考える風土」を

2014.09.09

>>>フィルム製料理カップ開発のきっかけは?

アルミはオーブン調理に適しているから、製菓資材としては強い。しかし、電子レンジで使えないことが弱点でした。それまでの総菜用料理カップは紙製だったのですが、汁物を入れると液漏れしてしまう。そこでフィルム製料理カップを開発しました。電子レンジでも使えるし、フィルムならいろんなカラーで作れるから、お弁当も華やかに演出できる。付加価値の高い料理カップです。

しかし、売り出した時は価格が高いからと見向きもされませんでした。アルミの10倍くらいの値段でしたから。それでもアルミ製のものは今まで通りに続けていきながら、「よそとちゃうこと」に注力したんです。最初こそ売れなかったけれど、有名な料理人の先生がプロデュースした高級弁当が大手コンビニチェーンで売り出され、そこに採用されました。それから大きく拡大することになったんです。

>>>ISO9001の認証取得に至った経緯はどのようなものだったのでしょうか

フィルム製料理カップが売れて、会社としても注目されるようになりました。そうなると、今まで以上に、きちんとした生産体制、安全で高品質であることが当たり前に求められるようになります。確かなプロセスで安定して生産するために、ISO9001の認証取得に乗りだしました。当社のような小さな会社が取得するのは当時異例でしたが、生産システム構築の先生との出会いもあり、後押ししてもらいました。

いざ始めてみると、作業マニュアルの作成と人材教育で、大活躍してくれるパートさんが出てきました。その人はパートリーダーになり、社員になり、係長になり、最終的にはりんくう工場の初代工場長に。社員たちががんばったおかげで、2001年に取得できました。

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>>>料理カップメーカーである御社が食品販売を手掛けるようになったのはなぜですか?

うちはメーカーなので、エンドユーザーの声が入ってきにくいんです。それで、実際の現場で使われる場面を想定し、いろんなテストをしていました。オーブンに入れた時にどうなるのか?油シミの広がり方はどうか?など、条件を変えて実験する。営業に配属されている社員にも「マドレーヌを焼け!」と研修させていました。

実験設備を揃えていったら、いつの間にか調理場ができあがっていたんです。実験の中でおいしいケーキができるようになり、これなら販売しようと2006年に洋菓子屋さんを立ち上げました。その後、ISO22000の認証取得をめざすことに。焼き菓子部門で取得している会社はあったけど、生菓子ではまだどこも取得していなかったんです。こちらは2007年に取得しました。

shiraha▲関西学院大学 経済学部 2回生 白羽 将さん

>>>海苔でできた可食カップの開発は、どんなきっかけだったのでしょうか

当初、生分解できるカップの開発をめざしていたんですが、なかなかうまくいかず苦戦していました。そこでふと思いついたんです。食べたらなくなるやないか!と。「よそとちゃうこと」精神で、早速開発に乗りだしました。同じ発想をする他社もあったけれど、アイデアと実際に生産することには隔たりがある。食品をつくるということで、衛生面でクリアすべきことも多いんです。当社はすでにISOを取得していて、その面でもスムーズに製品化できました。

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>>>仕組みを社内に浸透させるために必要なことは?

仕組みやルールをつくり、どう守らせるか。そのためにはやはり、やっている本人たちがその気にならないと浸透しない。たとえば製品に髪の毛が混入し、クレームになったとする。それをなくすためにどうするか、社員が考えて進めていけるようにするのです。帽子を2重にかぶるとか、2時間ごとに埃取りのローラーを互いの背中をかけあうとか。そうしたアイデアが現場から出るようになると、浸透していきますね。きっかけや環境を与えられることで、人も組織も伸びていくのだと思います。

そしてもう一点は、わかりやすさ。経営理念なんて難しい言葉より、大阪弁の話し言葉でわかりやすく表して、大事にしたい考えを社内に浸透させていきました。

>>>今後の事業展望をお聞かせください

国内シェア6割のコンビニ弁当用フィルム製料理カップ、アルミ料理カップを事業の柱にしながら、食品開発にも力を入れていく方針です。具体的には食品の風味がする可食シート、機能食材の開発です。分子調理学的なアプローチで商品開発し、新たな食の展開をめざしていきたいですね。他社にまねされてもいいんですよ。また次の手を考えればいいんですから。これからも社員たちと一緒に「よそとちゃうこと」をやり続けていきますよ。

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(取材・文/北浦あかね 写真/福永浩二)

木村アルミ箔株式会社

代表取締役 

木村裕一氏

http://www.kimura-alumi.co.jp/