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窮地に陥って初めて気付いた「真の経営」と「生きる意味」

2012.10.10

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2年間のサラリーマン生活を経てヒラタカグに入社した時、伊藤氏は「好きなインテリア関係の仕事でいずれ独立するためのステップとしか考えていなかった」という。先代社長から任されたのは会社として力を入れ始めたばかりの店舗内装工事の現場監督。「他人が5年かかるところを2、3年で吸収しようとがむしゃらに働いた」ことで仕事ぶりが評価され、先代からは「会社がつぶれるかどちらかが死ぬまでの縁やな」と一身に信頼を寄せられるようになった。その後、先代はがんを患い、入院してからわずか4ヵ月でこの世を去ることになる。後事を託されることとなった伊藤氏は「つぶしたらあかんとただそれだけの思いでした。経営うんぬんよりとにかく目の前の仕事を懸命にこなすだけだった」と振り返る。

3年ほどが経過し利益が順調に出始めた頃から「税金対策」として自家用車を会社の経費で購入するなど「公私混同しだしていた」と振り返る。数年経ち、これでよいのかと思い出していた頃、自身も肺の病を患って入院。さらにリーマン・ショックが追い討ちをかけ、初めて「真の経営とは?」「生きる意味とは?」を真剣に考えるようになる。そのとき触れたある経営者の哲学が胸に沁みた。「心をベースに経営する。」当たり前の言葉だが、もっと丁寧に社員の幸せや会社の未来を考えなくてはいけないと気づくきっかけになった。

軽い気持ちで入った会社で図らずも社長になり、困難に立ち向かう運命を受け止める伊藤氏の心を満たすのは周囲に支えられているという思いだ。自家用車は売り払った。リーマン・ショックの影響で同業者の中には職人を大幅に減らすところもあった。しかし同社では世代交代で若い社員も多く、子どもも小さい。それまで日給制だった従業員の給与を固定給にし、安定を保証した。

現在、下請けからの脱却をめざし、浮き沈みの激しい法人頼みから個人のお客様相手の店舗や住宅の仕事に手を広げている。「ないものを一緒につくりあげていく」という決意が込められた「創注(そうちゅう)」を全社の合言葉に、直接受注に軸足を移しつつある。「そのためには何より求められるのは人間力。会社は経営者の姿そのものだとすると、まだまだ自分の未熟さそのものの会社。周囲の人への感謝を忘れずに、自分自身を高めていかないと…」と語る表情は未来を見据えている。

 

hirata

▲「四方笑」夢を描く
「経営者になって10年余り。今が一番先が読めない厳しい時代。会社には多くの課題が山積しており、この高い壁を乗り越えるのは並大抵のことではない。私たち、お客様、社会、そして未来の四方を笑顔で結びつける。この思いで仕事に臨めば、状況は切り拓けると信じています」。謝を忘れずに、自分自身を高めていかないと…」と語る表情は未来を見据えている。

株式会社ヒラタカグ

代表取締役社長

伊藤 裕一氏

http://www.hiratakagu.co.jp/

設立/1991年 従業員数/18名
事業内容/注文家具製造販売、店舗の内装工事、住宅リフォーム。顧客、設計者、デザイナーの3者によるリノベーション、内装工事に注力。