ものづくり

《講演録》マツダデザインの挑戦

2020.01.23

 
▶危機感2 技術革新が与える影響

2つめの危機感は自動車業界のトレンドです。自動車の歴史は120年を越え、環境、安全技術の変化、クルマの価値自体が変化しようとしています。

トレンドを牽引しているものがCASE(ケース)と呼ばれる技術革新です。接続性(Connectivity)、自動運転(Autonomously)、共有(Shared)、電動化(Electric)など。これらはクルマ社会にイノベーションを起こす価値変革ですが、反面、リスクもあります。

 
実はクルマのデザインで最も重要でかつ難しいのは、人をどう座らせるかを決めることです。特にドライバーのポジション。ドライバーをいかに座らせるかがクルマの骨格を決めていく。視界の角度、配置などの制約の中で黄金比が研ぎ澄まされていく。

しかし、自動運転やAIといった技術革新はその骨格を取り払っていき、なんでもありの状態にします。技術革新で新しいフォルムが生み出される可能性はありますが、その一方で美の基準が失われていく。

私はひとりのデザイナーとしてそこに危機を感じています。

 
▶ブランドとは企業の生きざまと哲学

その危機感に対して何ができるのか。そこでスタートしたのがマツダの挑戦です。

われわれがめざすブランドデザインは、企業の生きざまと哲学を商品のカタチとして具現化すること、それを様式美まで研ぎ澄ませていくことです。

しかも第三者に依頼するのではなく、どんな課題も自分たちで勉強してトライアルアンドエラーを重ねていくスタイルをとりました。

 

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マツダ株式会社

常務執行役員

前田 育男氏

https://www.mazda.com