産創館トピックス/講演録

《講演録》1on1ミーティング〜部下と信頼関係を築き成長を支援する1対1のマネジメントとは[2]

2019.10.18

 
まず、上司に必要になるのが「傾聴力」です。特に部下が不安やもやもやを抱えているなど、ネガティブな状態のときには、話を聴き切る「傾聴」がとても効果的です。

「傾聴」には2種類ありあます。一つ目は「パッシブ・リスニング(受動的傾聴)」、自然な笑顔を見せる、あいづちをうつ、といったことを心がけることにより、部下に自分は受けいれられているという安心感を与えることができ、力を発揮してもらうことができます。

二つ目は、「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」です。部下の言った言葉を「オウム返し」したり、ある程度話した後に、「こういうことだよね」と要約して、まとめて返します。

また、部下の話を聞いて「それは大変だったよね」など、相手の気持ちや状態を相手以上に正確に描写することで、部下への理解や共感を示すことができます。丁寧に、じっくり部下の話を聞くことを続けていくと、部下との対話が安定してきます。

 
次に、部下の状態をさらに上げていくのが「承認」です。承認とは、ほめる、認めるということです。無理矢理にほめなくても、変化のある事実をそのまま伝えるだけでも良いのです。

その内容は「あの会議のときの、あの発言がよかった」といったように具体的であればあるほどいいです。また、その内容を「Iメッセージ」を使って伝えるとさらに効果的です。

「Iメッセージ」とは、自分の気持ちや影響を自分を主語にして相手に伝える方法です。「あなたが目標を達成してくれて(私は)すごくうれしい」、「あなたがいつも仕事を最後までやりきるので(私は)安心できる」など、あなたが行った行動が私にこういう影響を与えていますよ、と伝えるのです。

評価ではなく、自分の感じたことや変化を伝えるので言われた側はすっと受け入れられ、自分に価値を感じることができます。

 
このように、効果的な承認を行っていくためには、日頃から部下をよく観察する必要があります。そうすると、上司は部下のちょっとした変化にも気づけるようになってきます。

そのような変化を1on1で部下に伝えていき、回数を積み重ねることによって、部下は「1on1ではなんだかほめられるし、ちょっと楽しみな時間だな」と、だんだんと思ってくるようになるのです。

 
さらに「承認」に関して、「最高のほめ方」もご紹介します。これは「間接ほめ」です。

部下に対して「最近、○○さんがあなたのこと良いって言っていたよ」と第三者のポジティブな評価を伝えるのです。伝え聞くとうれしいですし「他にも自分のことをほめてくれている人がいるかも?」と良い想像までできます。

これ、逆を考えるとわかりやすいです。「最近、○○さんがあなたのこと悪く言っていたよ」と言われると、とても気分が悪いし、他にも自分の悪口を言っている人がいるのでは?と思ってしまいがちですよね。

この「間接ほめ」ができるのは、部下と部下をつなぐハブ(結節点)になっている上司という立場だからこそなのです。ぜひ実践してください。

 
>>>《講演録》1on1ミーティング〜部下と信頼関係を築き成長を支援する1対1のマネジメントとは[3]に続く

(文/今中有紀)

 
世古 詞一氏(株式会社サーバントコーチ 代表取締役/株式会社VOYAGE GROUP フェロー)
大学卒業後、外資系生命保険会社にて、営業・投資教育に従事。その後、ITベンチャーである株式会社VOYAGE GROUPに創業期より参画。営業本部長、人事本部長、子会社役員を歴任。2008年に独立し、現在は人事アドバイザーとしてフェローを務める。「働きがいのある会社」(Great Place to WorkRInstitute Japan)に2015年から3年連続で中規模部門第1位となった礎を築く。株式会社サーバントコーチの社名の由来は、米国のロバート・グリーンリーフ博士が提唱する『サーバントリーダーシップ』(まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである)の概念から。社会人時代に自身が心掛け実践し、コーチの役割を実践していく上での自身のあり方にも一致する、過去から未来に向けたアイデンティティとしての共感から命名。コーチングやエニアグラム、NLP、EQ、マインドフルネスなど10以上の心理メソッドに通じ、個人の意識改革から組織全体の改革まで、クライアントの可能性を最大限に引き出し、日々の充実感を得ながら、目標を実現していくサポートを行っている。

株式会社サーバントコーチ 代表取締役/株式会社VOYAGE GROUP フェロー

世古 詞一(せこ のりかず)氏

https://servantcoach.jp/