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外国人ユーザーの気持ちを汲んで日本製品を届ける

2019.04.04

日本のアニメや映画は今や世界中に行き渡っている。その中で見えてくる生活習慣、使うものも含めて遠く離れた島国の文化に興味を持つ人もおのずと増えている。

ウクライナで暮らすコーピル氏もそんな一人だった。高校の第2外国語で日本語を選択し、現地の大学を出た後、日本文学を研究すべく早稲田大学の大学院に進学した。

卒業の年に東日本大震災が起きた。ひとまず東京を離れ、ウクライナ人の知人を頼って大阪に出てきた。

「何か自分たちで事業を起こしてみよう」とペットブームにあやかって開発したのが、亡くなったペットをスマホ上で弔うアプリだった。しかし鳴かず飛ばず。「死は繊細な問題。日本人の感覚を知らない我々が踏み入る世界ではなかった」。

では外国人の自分達がユーザーの気持ちを理解して展開できるビジネスは何だろう。そんな思いで始めたのが日本の製品を買いたい外国人のために品物を買って送る購入代行サービスだった。

競合企業と差別化を図るため購入額の一定比率が主流だった手数料を一律300円に設定。化粧品や雑貨など外国人に人気のある日本製品を紹介するSNSをウクライナ語とロシア語で発信した。

すると依頼が多かったのは意外にも釣り具だったという。楽天の釣り具ショップに誘導し、商品解説を加えた。すると今度は楽天だけでなくAmazonの商品も見たいというリクエストが増え、Amazonともつないだ。

そして、まとめ買いする人から送料を抑えたいのでまとめて送ってほしいという要望に応えるサービスも加えた。低料金だけでなく、使う人の希望を丁寧に拾ったサービスが受け事業が成長。今では8カ国語までサービスが広がり、登録会員数は世界40万人に達している。

しかし、苦労も絶えなかった。外国人経営者ということで金融機関からは相手にしてもらえず、倉庫を借りる際にも保証人を立てることができなかった。「保証人はいないという条件を提示して貸してもらった」。

今でこそ外国人経営者でも参加できる投資家とのマッチングの場が増えてきているが、それもまだまだ少ないと感じている。

日本製品の詰まったボックスを手頃な価格で提供する「ZenPop」。文房具、菓子、カップ麺、美容品、それらをミックスしたものなど計5種から選ぶことができる。

購入代行サービスは各国語に対応できるカスタマーサービス要員を増強する一方、お菓子、文房具とインスタントラーメンを選んで毎月詰め合わせて送るサービスも始めた。

また、いずれ主力事業にと期待をかけるのが日本の出店者を集めた独自モールの展開だ。「海外に売りたいと思っている店は多いが、どうすればよいのかわからなくてできずにいる事業者を世界につなぎたい」との思いからだ。

同社の倉庫に商品を送れば、ユーザー向けの梱包、出荷は同社が担う。「日本で商売をするのと変わらない簡便さ」が強みだ。購買者、出店者双方にとってストレスのないサービスが同社の成長の原動力になっている。

代表取締役 オレクサンドル・コーピル氏

>>>外国人経営者のメリット
外国人ユーザーの気持ちに即したビジネスが展開できる。

>>>外国人経営者のデメリット
創業時のサポートが得られにくい。

 
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

ゼンマーケット株式会社

代表取締役

Oleksandr Kopyl氏

https://zenmarket.jp

事業内容/海外居住者向け日本商品の購入代行・発送サービス